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SAO:7tr―黒白の切り札―
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ることもできず、逃げるのに精一杯で転移結晶が封じられているこの状況で戦い続けてしまえば、全滅するのは間違いない。
 
「コーバッツ!」

 私も思わず叫んでしまう。それを心にしまわず、留《とど》まることはできなかった。

「今やるべきことが中佐としての使命? プライド? 攻略? そうじゃないでしょ! 今は逃げるべきなのよ! 死んだら全て終わるんだよ! 逃げるのが恥なら、死ぬ事は罪になるのよ! お願いだから恥を恐れないで、命を無駄にするような行動をしないで!」
 
 だが私の叫びは、彼に届いてくれはしなかった。コーバッツ中佐は怒号を上げ続け、部隊を立て直していく。

「おい、どうなっているんだ!!」

 ようやくクライン達六人が追いつき、兄が手早く事態を伝える。
 私達が斬り込んで連中の退路を開くことは出来るかもしれない。いや、そうしないと『軍』は救えない。けれども緊急脱出不可能な空間で、こちらに死者が出る可能性は少なからずあるかもしれない。何よりも人数が足りない。

「全員……突撃……!」

 なにか最善の策はないかと頭の中で模索しているうちに、コーバッツが悪魔の向こう側で部隊を立て直したらしい。
 ……考えている暇はない。
 目の前にいる人達を助けるのなら、立ち止まっている場合じゃないんだ!

「やめ」

 突撃しようとした時、ドウセツが右手で制して私を止めた。

「ドウセツ!」
「いいから」

 言葉で止めたドウセツは瞬時にボス部屋へ踏み込み『グリームアイズ』に近づくために疾走し始めた。

「なんで……」

 何故、私を止めてドウセツが先に行く? 足が速いから? 敏捷力が高いから自分が向かったほうがいいからか?
 ……それだけじゃない?

「まさかっ!」
「おい、キリカ!」

 兄に止められそうになるも、私はボス部屋に踏み入れドウセツに向かって一直線に走り出す。
 嫌な予感が間違いないでなければ、ドウセツは軍に攻撃される前に、囮になるために一人で勝手に飛び出した。そしてそのために私を止めさせた。
 人数が足りていないこの状況でみんなを助けるには、誰かが囮になり、その間に救うのが私の中で思いついた対策の一つ。それをドウセツは実行しようとするならば、ドウセツが危ない!
 私は疾走に駆けるドウセツに、なんとか追いつこうと必死に走り出した。
 だけど。
 私達が走り出した時には遅かった。
 まず軍の何人かが一斉に飛びかかるものの、満足に剣技を繰り出すことなんて出来ず、ただ混乱するだけだった。その一人、コーバッツはグリームアイズの巨剣の餌食にされてしまい、すくい上げられるように斬り飛ばされた。

「ぐはっ」

 私の目の前に激しく落下。唐突すぎで足を止めてしまった。

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