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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン79 鉄砲水と表裏の皇帝
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 それに、これはあまり大きな声では言えないけれど。この静かな闘志にあてられたのか、僕自身も心の底からかすかに高揚感が漲ってくるのを感じている。単純に、この強者と戦いたい。その闘争心がただのエゴでしかないことは否定できないけれど、それが僕の正直な気持ちだ。だから僕は、そっちからも何か言ってやってくれ、という翔の視線に気づかないふりをした。悪く思わないでほしい、なんて、言えた義理ではないけども。彼のためだけではなく僕自身のためにも、カイザーの願いを叶えたい。あの時の約束を果たしてもう1度、真っ向からカイザーと戦いたい。

「ならば翔、お前も来い」
「え……?」
「ヨハンに憑依したユベルとの戦いで、俺はお前に何を教えてやれた?お前にはまだ、これから変わる余地が残されているだろう。俺のデュエルをもう1度見ることで、お前も何かを掴むことができるかもしれない」
「そんな、僕は……」
「お前はこれまで、傍観者だったのだろう。今度は、お前が変わっていく番だ」

 傍観者、という単語に何か思うところがあったのか、急にさっきまでの勢いを失い暗い表情でうつむく翔。
 ま、なんか色々あったんだろう。愉快な話でもなさそうだし、別に深くは聞かないさ。それより大事なことは、なんだか場の空気が今の一言でガラリと変わったことだ。

「……あんまり無茶するようなら、絶対に途中でも止めてもらうからね?」
「ああ、好きにすればいい」

 あ、決まった。そして、カイザーが再び僕に向き直る。

「今すぐ、などと言うつもりはない。今日の深夜0時、灯台の下。それでいいか?」
「もちろん。正真正銘、今の僕にできる全力で挑みます。だからよろしくお願いします、カイザー」

 そして、翔に付き添われたままカイザーは帰っていった。早速デッキ調整をしようか、とボタンを押して腕輪型デュエルディスクを展開させたところで再び扉が開き、いつの間にかいなくなっていた葵ちゃんの顔がひょっこりと覗いた。

「お話し終わりましたか、先輩?」
「葵ちゃん、悪いけど今日はもう店じまいね。もう暇なんて言ってられないね、これからすっごく面白くなりそうなんだ!」

 言いながら、堪えきれない笑みがこぼれる。そんな僕の様子を怪訝そうに見つめ返したのち、彼女は肩をすくめて帰り支度を始めた。ほんと察しのいい後輩で助かるよ、葵ちゃん。
 それからのことは、ほとんど覚えていない。ただレッド寮に戻り、新しく入れたいカードとこれまでのデッキの中身を1枚1枚並べて何度も確認して擦り合わせた作業だけは覚えている。というより、そればかりやっていたらいつの間にか夜になっていた、というのが正しい。だがその甲斐もあって、今の僕に用意できる最高のデッキが組み上がった……はずだ。

「よし。行くよ、皆」

 
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