巻ノ百四 伊予へその十一
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「こうなってはな」
「大名家として」
「大介殿も同じ考えかと」
「どう見ましても」
大介も言う。
「ああなっては」
「そうであるな」
「はい、あのままいけば」
「大坂を出てもな」
「官位は高く」
朝廷のそれがだ。
「石高も高く国持ち大名として」
「幕府は遇するな」
「もうそれだけで充分かと」
幕府としてはだ。
「大坂さえ出ればです」
「幕府としてもな」
「豊臣家を滅ぼすまでもありませぬ」
そうしたものだというのだ。
「まさに」
「だからな」
それでというのだ、幸村も。
「徳川家、幕府にとってもそれには及ばぬ」
「ただ、ですな」
「国替えだけじゃ」
つまり大坂から出てもらうというのだ。
「後は国持ち大名になってもらう」
「若しお拾様に何かあれば」
「それで終わる家じゃからな」
秀頼、彼にというのだ。
「もっと言えばお拾様に何かすることも」
「幕府にとっては造作もないこと」
「大御所殿はあの城に長くおられた」
秀吉の下の重臣としてだ、あの城に長くいてそのうえで勤めを果たしつつ城の隅から隅まで見て頭に入れていたのだ。
「よきことも悪きこともな」
「そしてですな」
「隠れた道もじゃ」
秀吉が密かにもうけたそれもというのだ。
「ご存知じゃ」
「では」
「しかも服部殿がおられ」
そしてというのだ。
「十二神将という上忍も揃っておる」
「では」
「服部殿に一言かけられればな」
その大坂城のことを全て知る家康がだ。
「お拾様もじゃ」
「まさにひとたまりもない」
「そしてお拾様に何かあれば」
「それで豊臣家は終わりじゃ」
そうなるというのだ。
「容易にな」
「それも実に」
「だからな」
そうした状況だからだというのだ。
「幕府は豊臣家を潰そうと思えば何時でも出来る」
「しかしそうされないということは」
「潰す気がないということじゃ」
「そこを豊臣家はご存知か」
「それじゃ」
まさにそのことだというのだ。
「茶々様があれでは」
「どうにもなりませぬか」
「まだ天下人だと思っておられる」
豊臣家がというのだ。
「治める仕組みもないというのに」
「はい、治める仕組みがなくては」
「天下は治められぬ」
「一つの藩を治める位じゃ」
今の豊臣家の政の仕組みはというのだ。
「五大老、五奉行もない」
「最早」
「しかし幕府にはそれがあり」
「刻一刻とですな」
「その仕組みがさらによくなってきておる」
「それでは」
「もうどうにもならぬ」
豊臣家の天下ではないというのだ。
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