美髯公の呪い〜小さいおじさんシリーズ19〜
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緩慢な動きで俺の握り拳程になっていった。…大家の息子が小さく悲鳴を上げた。俺も喉からせり上がって来た悲鳴を必死に呑み込んだ。
―――暗がりに、大きく見開かれた双眸が浮かび上がり、目が合った……!!
「ひぃっ、こっち見た!!」
大家の息子の声に弾かれるように、俺は襖に向かって突進していた。…今にしてみれば、どうしてそんなことをしたのかは分からない。だが俺の本能が、警鐘を乱打しまくっていた。これ以上、この襖が開くと取り返しのつかないことになる!と。
俺は襖に飛び付き、バンと音を立てて閉めた。
おじさん達が一斉に「わっ」とか「ひぃっ」とか短い悲鳴をあげた。…余りに静かなので、そっと顔を上げて襖を確認すると、青白い指など挟まってはいなかった。ただ、閉じた襖があるだけだ。
「……関羽殿……何かご存知、とお見受けするが」
ノートパソコンの影に隠れていた端正が、棒立ち状態の関羽を睨んだ。
「―――顔良」
「顔良とな!?」
それはまだ蜀の立国以前の話。
「中原に名を馳せた袁紹麾下の豪傑・顔良の名は、まだ少年であった俺も聞いた事がある。官渡の戦いにおいて関羽殿、卿が一刀のもとに斬り伏せたと聞いているが」
「う、うむ…」
僅かに関羽の目が泳いだ。そんな不審な行動を、あの性悪白頭巾が見逃すはずがなかった。
「―――どうなさいました、関羽殿。何かこう…顔良との勝負に何やら、後ろめたいものがおありですか?」
「貴様には関係ない」
吐き捨てるように云って踵を返し…襖を厭そうに一瞥した。襖の奥があんなことになってしまって、彼らは今日は何処から帰るつもりなのだろうか…などと考えていると、大家の息子がやおら大きな声を出した。
「あー!その件ですね!?知ってます知ってます!!」
―――おいやめろ、何か余計なことを云うつもりだな。
「官渡の戦いにおける関羽VS顔良に関しては、色々な説があるんですけど、その中でひときわ面白いのはですね、顔良は劉備に関羽の所在を確かめて、伝言をお願いしたい、と頼まれていたという説なんですよ!!」
―――っえー!!??…じゃ、じゃあ関羽は、その…?
「先の戦で関羽を見失ってしまった劉備はその身を案じておりました。そこで同僚である顔良に、伝言を依頼したんですよ。関羽の人相などを伝えた上で、前線で関羽を見かけたら劉備が袁紹軍にて待っている旨を伝えてほしい、とね!!」
「………ぬぅ」
「だから顔良は、伝え聞いた人相の男を見つけると、一目散に駆け寄ったわけですよ!そこを問答無用に青龍偃月刀で、バサァと首を刎ね落とされたわけだから堪らない。劉備と合流して真相を知ったところで後の祭り!」
全部云い切ってドヤ顔で周囲を見渡す大家の息子。そして『居ないことにしている』都合上、こいつの言葉に乗っかることも否
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