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俺の四畳半が最近安らげない件
美髯公の呪い〜小さいおじさんシリーズ19〜
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「ボス直下に空気読めないお邪魔虫が2匹も鎮座しているという、エクストリーム難易度なミッションでしたからねぇ…のんびり内政に手をつけている暇など、とてもとても…」
「ちょ、やめ、貴様!!」「駄目だこいつ、軽めに死ぬ薬とか嗅がせろ!!」
ジャキ、と不穏な音がした。偃月刀は白頭巾に照準を定め、白頭巾の嫁が潜んでいる辺りの畳がごそりと蠢いた。関帝様はもう、カンッカンに出来上がって、どこかの軍神みたいな顔で三人を見下ろしている。
「ほう…なるほど、なるほど…数千年振りの刀の錆が蜀の丞相とは…贅沢な贄であるな、我が愛刀よ」
大家の息子が、感嘆のため息を漏らした。無理もない。彼の伝説の武器、青龍偃月刀が閃く瞬間を目の当たりにしているのだ。俺も相手が華雄とかだったらため息と共に見惚れほうけていたことだろう。…だが。
「ちょっ…関羽殿、無礼は承知だ、だが分かるであろう?こういう男なのだ!!」
「そうだ静まれ関羽殿、掃除が大変だから!!」
端正が何気に酷い。…しかしある意味、然りだ。あの小狡い頭巾が死ぬことはないだろうが、伝説の軍神と霊長類最強女房がこの部屋で激突したら、テレビやゲーム機を始めとした俺の私物は只では済むまい。俺は恐る恐る、関羽と白頭巾の間に…


―――我は……○○なり


関羽の動きがぴたり、と止まった。すわ、嵐の前の静寂か!と俺もおじさん達も思わず身構えたが、どうも様子がおかしい。伝説の軍神ともあろう彼が、どうも何かに怯えているようなのだ。
「―――おや、何か聞こえましたね」
羽扇を緩やかに動かしながら、白頭巾が呟いた。
「―――気のせいだ、何も聞こえん」


―――まかり、ならぬ


「いや、俺も聞こえた。俺の耳は絶対に間違えない」
さすが美周郎、自分の耳への絶対的な信頼は揺るぎない。
「襖の方だぞ!」
今や全員が武器を降ろし、息を呑んで襖の陰を伺っていた。…俺にも聞こえる。襖のあたりで、あたかも谺するかのように響きわたる奇妙に錆を含んだ、声。
「―――私は、偶然行き合った旅の僧に救われて『浄化』された」
関羽がこめかみに汗を伝わせて呟いた。
「しかしそれは、運のいいことだったのだ。…『奴』は浄化もならぬまま、怨霊として現世を彷徨い続けている…」
ぞろり、と青白い指が襖の裏側から現れ、襖のへりに掛かった。…誰もが、びくりと肩を震わせた。青白いその指は、襖を撫でるように動きながら、次第にその隙間を広げている。それより、なにより。
その手は、俺と幾らも変わらぬ大きさだった。
「馬鹿な……」
白頭巾も掠れた声で呟いて、襖の奥をただ凝視するのが精一杯だった。


―――彼の地にて、関帝を祀ることまかり、ならぬ。


青白い指は少しずつ、襖の隙間を押し広げていく。1寸程だった隙間は、
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