美髯公の呪い〜小さいおじさんシリーズ19〜
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れ取って、あとは茶を啜っている。
「それな!まさにそれな!この国の民、関羽好きだよな!」
我が意を得たりとばかりに、豪勢が身を乗り出してきた。
「知恵と武勇を兼ね備えた堂々たる偉丈夫であったなぁ…あの昼行燈の豆狸には勿体ない傑物だ」
昼行燈の豆狸って劉備のことか。
「かの英傑にならばこの月餅をまるっと進呈してもいいというのに…」
そう声高に云いながら、襖の隙間をちらっちらっと伺う。…あのデカいのが来ると部屋の損壊が激しいからやめて貰いたいんだが…。
「ははは。…来ないんじゃないですかね」
「なにを!?」
「あの一件以来、貴方、衆道家だと思われてますよ」
「ぐぬぬ」
―――半年ほど前だったろうか。
関羽死後の遺体の所在について云い合いになった時、豪勢がうっかり『これで関羽は永久に俺のもの』とかBLめいた台詞を口走り、しかもそれを関羽本人に聞かれてしまい、以来関羽は豪勢を警戒しているらしいのだ。
「あれは誤解だと!本人に伝えてくれと!貴様に託したよな!?まさか貴様、伝えていないのか!?」
「用もないのにお会いしませんよ、私は」
「ぐぬぬ」
そういえば、白頭巾と関羽は仲激悪だったっけ。
「まぁしかし…横浜の民もよくもまぁ、あのような祟り神を祀りあげるものですね」
羽扇の影で忍び笑いをもらし、白頭巾が声をひそめた。
「祟り神?」
端正が身を乗り出してきた。
最近気が付いたのだが、端正は怖い話が好きだ。特に祟りなどを題材にした、どっちかというとドロッとした内容の救いのないやつを好む。『リング』とか『女優霊』とかそこら辺だ。『呪怨』までいくと、ちょっとケバくて厭だとか。相変わらず注文が細かくて面倒臭い。
「そう。関羽殿は死して祟り神となったのです」
「…なるほど、やはりアレは関羽殿の祟りなのか!?」
端正が、いつも白頭巾の嫁が潜んでいる辺りを親指で指した。白頭巾が唇に人差し指をあてて「静かに」のジェスチャーを送るが、スイッチが入ったこいつらには利かない。
「全て合点がいったぞ、あの顔面は祟りによるものだったのだな!!」
豪勢が端正の尻馬に乗っかって失礼な発言をかぶせてきた。
「嫁が人外になる呪いなのか、人外が嫁となる呪いなのか…なんと恐ろしい呪いであろう!!」
「いや、私は別に呪いの対象では」
「おい貴様、試しにあの女怪と離婚して美女と結婚してみろ。余が手配してやる。…人外に変化したら相当強力な呪いだのう」
「何と興味深い検証だ!卿、偶にはいいことを云うな!」
「ははは…検証もなにも、彼女は嫁入り時点であの顔面で」
―――盛り上がっている3人の間を縫うように白光が閃き、『カッ』といい音をさせて長い針が砂壁に突き刺さった。
咄嗟に針が飛んで来た方向を見ると、赤い筒のようなものがスッと畳の下に
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