Epilogue ーナミの決意ー
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『……』
お互いに無言の時間が流れる。
ナミは変わらず視線を眼下の墓標に注ぎ、アキトはそんな彼女を黙って見詰めていた。
その場に静寂が広がる。
「……このお墓は、私のお母さんのベルメールさんのものよ」
ナミが絞り出すように力なく口を動かす。
無意識にアキトの手を握る力を強める。
ナミは顔を下に伏せ、表情を窺い知ることは出来ない。
彼女の声音からこの場にはいない母への慈しみ、愛しみ、そして悔恨という強い感情だった。
一層アキトの手を握る力を強めるナミ
「……」
アキトはナミから視線を外し、目の前の墓標を何となしに見つめる。
ベルメールという女性についてはノジコから聞いていた。
アーロンがこの島に上陸した時にナミとノジコのことを守るために命をかけ
───殺されたことを
「ナミの母親ですか……」
「うん」
ナミは弱々し気に首肯する。
「素敵な人だったんですね」
「うん」
きっと、素敵な人だったのだろう。
「大好きだったんですね」
「……っ!うん!」
アキトの問いに力なく一つ返事で答えるナミ
今なお彼女は顔を伏せている。
「……」
今、彼女の心中に渦巻くは母であるベルメールへのこの島が解放されたことへの喜びか、それとも母への止めどない愛情か、アキトには推し量ることしか出来ない。
アキトはナミの手を優しく解き、ベルメールの墓標の前に膝をつき、手を合わせ黙祷を捧げた。
愛する娘達を守るべく、命を張った一人の女性への安らかな眠りを祈る。
「……」
ナミは黙祷を捧げるアキトをじっと見つめる。
その瞳には真摯に祈りを捧げる一人の少年の大きな背中が映っていた。
この島を偶然訪れた少年の手によって長年続いた支配は終わりを迎えた。
自分はこの少年のことを何一つ知らない。
何故、自分にここまで尽くしてくれたのかも知らない。
途端、ナミの中に何とも言えない不明瞭な気持ちが湧き上がる。
何かモヤモヤとしたような、納得がいかないような気持ちが広がる。
推測の域を出ないが、恐らく自分はまだ気持ちの整理がついていないのかもしれない。
ナミは今なお黙祷を捧げるアキトへと呼び掛ける。
「……ねえアキト。1つ聞いてもいい?」
アキトが此方に向き直ったのを確認したナミは気になっていたことを問いかけた。
「アキトはどうして赤の他人である私のためにここまで尽くしてくれたの?」
我ながら酷いことを聞いていると思う。
アキトに何故、村を助けてくれたのかを無神経にも尋ねているのだ。
だが、それ以上にナミは自身の胸のしこり
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