二話
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幼く万里が大きく見えた。そして、あの獲物を見つめるような赤く光る目・・・。十座はちらりと万里の瞳を見る。
(やっぱり普段は赤くねえんだな。)
十座がそんな事を思っていると万里と視線があった。
ズキッ。
よく解らない痛みを首筋に感じて眉間に皺を寄せあの印に触れる。
(何だ?今の。)
秋組の5人と迫田は太一が話していた洋館の前に立っていた。昼間なのに不気味な佇まいのそれは太一に恐怖を思い起こさせる。
「臣、兵頭と太一を頼む。」
万里はそう言うと軽く大地を蹴って空に飛び上がる。
「ば、万ちゃんが飛んでるっす!?」
太一はパニックをおこしかけ、臣は宥めるようによしよしと頭を撫でる。
「行くぞ、迫田。」
「へい、アニキ。」
武器を片手に左京と迫田は門から入って行く。
「み、皆だ、大丈夫っすかね。」
震えながら洋館を見つめる太一の隣で十座は胸騒ぎを覚えながら黙って様子を見ていた。
ズキッ。
また首筋にあの痛みが走る。万里は劇団に入ってすぐ血を吸って来たが、あの日以来十座の血を吸ってはいなかった。そして、痛みは日に日に強くなっている。
無意識に十座は中に走りこんで行った。
後ろで太一と臣が十座を呼び止めようとするが、何かに導かれるように洋館に飛び込んだ十座はそのまま上の階へと続く階段を駆け上がる。
「摂津。」
万里の名前を呼びながら広い廊下を歩く。窓から太一と臣の姿が見えた。下の階では左京と迫田の話し声が微かにしている。
「アイツ何処に行った?」
「君、誰?」
突然背後から知らない声がして振り向くと首筋に薄紅色のバラの刺青をつけた20歳前後の青年が立っていた。
「テメエこそ誰だ。」
「僕?僕はここに住んでいるんだ。君は勝手に人の家に上がり込んでいるんだよ。」
青年が右手を差し出すと、突然突風が巻き起こる。
「兵頭危ねえ。」
遠くから万里の声を聞いたと思ったその時、十座は吹き飛ばされて空中に浮いていた。落ちると思ったその時、誰かの腕に抱き抱えられる。
「摂津。」
「お前何で来た。」
「悪い・・・。」
十座が申し訳ないと俯くと、突然万里がぐらりと体制を崩して二人はそのまま地面に落ちた。幸い十座は万里を下敷きにしたため怪我は無かった。
「何だ・・・これ。力が入らね。喉が・・・。」
本来万里は一年に一度血を飲めば普通に生活が出来るし力も使えた。が、突然喉の乾きと空腹感が身体を縛る。今すぐ飲みたいという衝動に駆られて万里は十座の首に噛み付いていた。
ゴクリゴクリと喉を鳴らして血を啜る。
途端に十座はめまいを覚えてその場で意識を失う。
「随分嫁に対して酷い事をするんだね。」
頭上から声がし、万里が見上げると1人のヴァンパイアが空中に浮いていた。そこに左京と迫田が合流する。
「摂津、お前。」
万里の腕
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