第一話
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す部屋に入るなり十座は小さく呟いた。その日の夜は満月でまたあの夢を見た。ただ、夢の内容がいつもと違っていた。
ヴァンパイアの前で腰を抜かしているのは幼い頃の自分ではなく、今の自分だったのだ。
逃げようとしても身体が動かない。最初暗くてヴァンパイアの顔は解らなかったが、月の光を浴びて現れた姿に十座は息を呑む。
「・・・摂津・・・。」
確かに発音した筈が声は出なかった。突然首筋に痛みを覚えて目が覚めると、誰かが自分に覆いかぶさっている事に気がつく。
「目が覚めたのかよ。」
十座の首筋にかぶりついていたその男は顔を上げて十座を見下ろす。
「お前・・・。」
「その顔、思い出したみてえだな。」
口についた血を拭う万里の口からはヴァンパイア特有の牙が生えていた。
幼い頃に出会ったあのヴァンパイアだった。
「はあ・・・。やっぱりお前の血は最高だな。力が戻ってくる。」
クククと笑うと、万里はそのまま宙に浮く。自分の身体に異常が無いか確かめるように手足を動かす。十座は動けない身体のまま、視線だけ万里を追っていた。
朝万里は今まで以上に体調がよかった。人間の姿を保ってはいるが、昨日十座の血を飲んだ事でヴァンパイアの力を取り戻したのだ。その一方十座はぐったりとしてまだ布団の中にいた。
「ちと吸いすぎたか。」
そのまま宙に浮くと十座の顔を覗き込む。十座は貧血を起こして辛そうな表情を浮かべていた。
万里が十座の頭に手を置くとそこから暖かい何かが十座の身体を包み込む。
「悪いな。この間ハンターにやられた傷が結構深かったからよ。ちと吸いすぎたわ。」
「っ・・・。」
十座は顔を背ける。
「なんだよ。怒ってんのか?」
「どういうつもりだ。」
「これの事か?」
つんつんと昔付けた跡を万里はつつく。
「これはお前が俺のモノだって言う印だ。これがある限り、お前は他のヴァンパイアから目を付けられる事も無い。」
守ってやってんだぞと万里はニヤニヤ笑って言う。
「そういう事じゃねえ。」
聞きたい事は沢山あるが、十座は言葉を飲み込む。
「これからはお前の傍にいる事にしたから。」
「はあ?」
意味が解らず聞き返そうと身体を起こすと、万里はひらひらと手を振って部屋から出ていった。
「へえ。やっぱり生きてたんだ。」
「至さん。」
廊下に出た時に声を掛けられて振り返ると同じヴァンパイアの至が立っていた。
「でも、気をつけた方がいいよ。秋組には二人もハンターが迷い込んでいるからね。俺達がヴァンパイアだってバレたら大変な事になる。」
「解ってますよ。けど、何でアンタがここに?」
「嫁を追ってたらここに来た感じ?」
「なる。てか俺と同じかよ。」
ウケるとクスクス笑う。
「まぁ、所詮ヴァンパイアってそんなもんでしょ。嫁を手に入れた者は一
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