795部分:第六十四話 公孫賛、誰からも忘れられていたのことその十
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第六十四話 公孫賛、誰からも忘れられていたのことその十
「だから。忘れることなんてないわ」
「そうですか」
「御友達だからなんですね」
「ええ、だからね」
こう二人に話す。
「忘れる筈がないわ」
「わかりました」
「そういうことなんですね」
軍師二人も微笑んだ。二人は劉備のこともだ。あらためてわかったのである。
劉備の治世は順調にはじまり軌道に乗ってきていた。それは他の州から見てもだ。実に見事なものだった。
孫策がだ。こう孫権に話していた。
「徐州のことだけれどね」
「劉備殿が牧になられましたね」
「ええ。かなりの善政を敷いてるみたいね」
微笑んでこう孫権に話すのだった。
「それで徐州はかなりよくなっているそうだけれど」
「その様ですね。あの方の下には人材もいますし」
「そうね。どうやらあの娘は文も武も秀でてはいないけれど」
少なくともだ。傑出しているというところまではいかない。
「けれどあの娘にはそれ以上のものがあるのね」
「人を惹き付けるものね」
「そう、それがあるのよ」
それがだというのだ。
「それがあるからね。ああした人材がね」
「集まりますか」
「南蛮からも来ているそうね」
猛獲達のことである。
「そこからもね」
「南蛮からもですか」
「ええ、そこからもね」
「それはまた」
それにはだ。孫権も驚きを隠せない。
「かなりのものですね」
「そうね。揚州でもそこまではね」
「はい、山越の人材は」
「下級士官ではいるけれどね」
「いません」
「それも自分から仕官してくるのはないわ」
この辺りに異民族統治の難しさが出ていた。孫策にしても袁紹にしてもである。その統治にはそれなり以上の苦労を抱えてしまっているのである。
「それがあるっていうのはね」
「劉備殿の人徳故ですか」
「ええ。若しかしたらあの娘は」
孫策は腕を組んでだ。考える顔になって妹に述べた。
「私なんかよりもずっと凄い娘かもね」
「姉上、幾ら何でもそれは」
「だって。私にはそこまで人を惹き付けるものはないから」
こうだ。軽い苦笑いを浮かべて妹に話す。
「それを考えたらね」
「武や文の問題ではありませんか」
「私が武で貴女が文でね」
孫家はおおよそそうした割り当てになっている。もっとも二人共それなり以上に武も文もできる。だが孫策は基本的に武の人間なのも事実である。
「それで小蓮はこれからね」
「そうですね。ただ小蓮の素質は」
「凄いわね」
「はい、私達以上です」
姉達だからこそだ。その素質はよくわかっていた。
「まさに天才です」
「武も文もね」
「あの娘はやがて天下に比類なき英傑になります」
「そうね。けれど人を惹き付ける力はね」
「身に着けようと
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