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勇者にならない冒険者の物語 - ドラゴンクエスト10より -
死の嵐
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約を持ちかけてやったと言うのに。やれやれ、強情な事だ」

 悪魔族は翼を広げると立ち上がって、ソファの脇に立てかけてあった大きな斧を掴み上げて肩に担いで見せた。

「さて、それでは時間切れだ。小娘の魂だけでよかったのだが、君達まとめて海に沈めてやるとしよう」

 悪魔族は、ゆがんだ笑みを浮かべると「リレミト」を唱える。輝く光の玉が現れ、それに触れるや悪魔族は船外、上空十メートルの位置に瞬間移動していた。
 眼下の凄惨な光景を見下ろして満足げにほほ笑む。

「正直、エルフがどこにいるかなど知るすべはないのだが。まとめて始末してしまえば同じこと。とはいえ、エルフの乙女の魂の味は絶品。単体で殺せないのは少々惜しい気持ちはしますが。喰らうという意味では同じことですしねぇ」

 巨大な斧を左手に腰にためるように構えると、右手を天高く突き上げる。まがまがしい魔力がその右手のうちに収束していった。



 アプラック号、デッキ後方の救命艇付近。
 エルフのパラディン二人が、大きな刀を背負ったエルフの少女を連れて救命艇を降ろさんと悪戦苦闘していた。
 大王イカの断続的な攻撃に、船は激しく揺れており、救命艇を海面まで降ろすことができずにいたのだ。

「このままでは、このままではまずいぞ。大王イカと渡り合える冒険者はいないのか!」

「商用の装甲船などに、そのような英雄級の冒険者など乗っているはずもなし!強引にでも救命艇を降ろすのだ!」

「ここまで揺れておっては、海面に落とした衝撃で救命艇など壊れてしまう!」

「ではどうするのだ!あああ、姫様、申し訳ありません。何としても、何としてでも姫様だけはお助けいたします!」

 うろたえる二人のパラディンに、大きな刀を背覆ったエルフの少女は言った。

「エンギ、リョウギ、二人ともすまない・・・。私が冒険者になって証を建てようとしさえしなければ、そなた等をこのように巻き込むこともなかった。ほんとうに、すまない・・・」

 エンギとリョウギの二人のパラディンは、救命艇にしがみつきながら少女に詫びるように頭を垂れた。

「姫様・・・そのような・・・! 我等がついていながら、お守りすることもかなわず・・・!」

「ああ、姫様・・・姫様だけでも、どうにか・・・」

 船が激しく揺れる。
 右に大きく傾いたのだ。
 その衝撃で、彼等がどうにか降ろそうと悪戦苦闘していた救命艇の留め金が外れる。
 外側に大きく煽られる救命艇の支柱。
 救命艇を支えていたロープが勢いよく救命艇をひっぱり、まるで釣り竿から放たれるルアーのように夜の海に舞った。
 それにしがみついていた二人のパラディンを、巻き添えにして。

「うおお!」

「ああ、姫様ああああ!」

「エン
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