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歌集「春雪花」
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 寂しげに

  鳴くは鈴虫

   きりぎりす

 恋し想いそ

   歌いけるかな



 真夜中…一人寂しく夜を眺めれば、あちらこちらから虫の鳴き声が響いてくる…。

 鈴虫…蟋蟀…月のない暗闇に、寂しさを助長するには充分だ…。

 そんな虫の鳴き声は、まるで…恋しい想いを奏でているようで…。


 私まで…彼を想って…泣きそうになってしまった…。



 雲の上

  月は在りしや

    見えねども

 君はなかりき

    憂きし秋かな



 夜も更けて静まり返る闇…。

 空は雲で覆われ、月はその姿を現してはくれない…。

 たとえ見えなくとも…月は雲の上に輝いていようが…


 ここに彼の姿はなく…ただ、寂しい秋だけがあるばかり…。




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