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真田十勇士
巻ノ百四 伊予へその五

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「望みがあります」
「より強くなりじゃな」
「そしてです」
「真田殿の為にか」
「以前お話した通りです」 
 その思いはというのだ。
「変わっておりませぬ」
「だからじゃな」
「猿の様に動ける様になり」
 これまで以上にというのだ。
「そして」
「真田殿と共に戦うか」
「そうする、是非な」
 こう話してだ、そのうえで猿飛は猿と共に山を駆け巡るがここでえ彼はこんなことも言った。
「猿になりそして」
「わかるか」
「猿よりも」
「よき動きをするのじゃ」
 猿の動きを身に着けそうしてというのだ。
「わかるな」
「無論、藍色じゃな」
「藍色は青になるがな」
「青よりも青い」
「そうじゃ、お主はそれになれ」
 藍、それにというのだ。
「猿になりそしてじゃ」
「猿よりも見事に動け」
「猿を超えるのじゃ」
「それがわしの目指すものか」
「無論わしよりもじゃ」
 今教えている大介以上にというのだ。
「よい動きをせよ」
「祖父殿よりも」
「そうじゃ、わしは精々猿じゃ」
 それ位だというのだ。
「そこまでじゃ、しかしな」
「わしは猿を超える」
「猿以上の動きを身に着けてな」
「そうしてそのうえで」
「さらに強くなってじゃ」
 そのうえでというのだ。
「真田殿の為に戦え、真田殿ならばな」
「間違ったことはせぬしな」
「ここまでことの善悪を見分けることが出来一本気な方はおられぬ」
 大介は自分達と共に野山を駆け巡り幸村も見た、彼もまた猿と同じ様に動き木の枝から枝に手で素早く跳んでもみせている。
「だからな」
「わしは殿と共におれば」
「間違えぬ、しかしな」
「しかし?」
「お主が一番よかったことはじゃ」
 それはというと。
「仕える主を間違えなかった」
「そのことか」
「むしろこれ以上はないまでによい主に出会えてな」
 そしてというのだ。
「仕えることを選んだ、このことがじゃ」
「一番よかったことか」
「よくこれだけの主に会えて仕えたな」
 大介はまた幸村を見て微笑んだ。
「よいことじゃ」
「そう言ってくれるか」
「仕える主に石高や権勢を求めなかったな」
「その様なもの何の興味もない」
 猿飛は賭けつつ笑って応えた。
「それこそな」
「そうじゃな」
「うむ、わし等はじゃ」
 十勇士全員はというのだ、猿飛だけでなく。
「皆そんなものは道の石程にも思わずな」
「そうしてじゃな」
「仕える主を選んでな」
 そしてというのだ。
「今もじゃ」
「こうして修行をしておるな」
「そういうことじゃ、石高が多い主ならな」
「幕府じゃな」
「そちらに仕える」
 家康にというのだ。
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