巻ノ百四 伊予へその三
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「参上しました」
「成程な」
「それでなのですが」
「よく来てくれた」
肉親、孫に見せる暖かい顔での返事だった。
「それではじゃ」
「はい、それではですな」
「うむ」
また孫に応えた。
「それではまずは家に入りじゃ」
「お話をですか」
「しようぞ、では殿も」
大介は幸村にまた声をかけた。
「中にどうぞ」
「そしてじゃな」
「まずはお話をしましょう」
「それでは」
こうしてだった、二人は猿飛が生まれ育ったその家に入った、そこは質素なものでものも少ない。
だが何処か人の気配を感じてだ、幸村は言った。
「この気配は」
「はい、よくです」
「人が来られるのですか」
「山の者達が」
「あの者達がか」
「よく来まして」
それでというのだ。
「お互いに仲良くして寝泊まりもしてくれます」
「そうであるか」
「実は我等は山の者達と比較的近くてです」
猿飛も話す。
「その血も濃く入っております」
「そうであったか」
「そのせいか山のことについてはです」
「十勇士の中でも随一なのじゃな」
「猿とも親しくしておりますし」
「そうであるか」
「猿飛という姓もです」
これもというのだ。
「実は」
「そのことからか」
「先祖が名乗ったとか」
「先祖は平家の落人だったかも知れませぬ」
大介も二人に話す、飯の用意で山菜や獣の肉の鍋の用意をしながら。味付けは塩で簡単にしようとしている。
「そこはわかりませぬが」
「しかし山の者達とはか」
「今も縁が深く」
それでというのだ。
「猿達ともです」
「親しいか」
「はい」
「山にいる者達とじゃな」
「常に親しくして」
そしてというのだ。
「何かと賑やかですし」
「鍛錬もじゃな」
「しております」
「特に猿じゃな」
彼等と交わることがとだ、幸村は話した。
「あの者達と共に動くとな」
「はい、何しろ身軽で体力もあり」
「ついていくだけでも大変じゃしな」
「あの者達と山で遊ぶだけでです」
大介は笑って幸村に話した。
「これ以上はないまでの鍛錬になりますじゃ」
「そうして今もか」
「この歳になりますが」
しかしというのだ。
「お陰で充分に動けております」
「しかし祖父殿は」
猿飛は幸村に飄々とした態度で話す祖父に言った。
「腰は曲がっていて」
「それでじゃな」
「動きも衰えていますが、いや」
自分で言ってだ、猿飛は自分の言葉をすぐに訂正させた。そのうえで自身の祖父にあらためて言った。
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