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太陽は、いつか―――

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「私、とっても楽しかった。聖杯へ託す願いも半分以上叶ったようなものだったから」

と、そういって。こんな場面だというのに、色香を纏って笑う。そこでようやくここまで体が動かなかったのは彼女のスキルによるものだと気づいた。

「だから、お願い。太陽はいつか、沈むもの。折り合いを付けて、笑って―――」

魔術師としてのスイッチを入れている俺が感情に支配されるはずもなかった、すぐに気づくべき簡単な事柄であった。しかしそうとわかった時にはもう、俺の体が言うことを聞くはずもなくて。

「長生きしてね。大好きよ、カズヤ」

彼女の心臓が槍に貫かれるのを、ただ見ていることしかできなかった。



 =☆=



サーヴァントの消滅が始まった。
少年は慟哭した。金色(こんじき)の粒子となって消えゆくサーヴァントを見て、ほんの数日の日々を思い出して、ただ何もできずに涙を流す。
少女は破顔した。少年を悲しませてしまったことを悲しんで、同時に自分の死を悲しんでくれる人がいることを喜んで。だからどちらでもない表情へ破顔する。
槍兵は敬意を払う。目の前にいるのは弱者だ。己のように戦場を駆けた人生もなく、怪物を相手取った逸話もない。だがそれでも、最後の覚悟は気高い。戦士であっても中々手に入れられないものだ。

サーヴァントは消滅した。
少年は立ち上がった。魅了は解け、体の自由は完全に戻っている。ナイフを持ち上げ、再び腕につき立てようとしたところで、少女の最期の言葉を思い出す。たったそれだけで、もう何もできない。
槍兵は何もしない。女は自らの命と引き換えに少年の助命を請い、マスターも何も言ってこない。であればせめて、落ち着いたところで己を殺したくはないのかと問う必要があるだろうから。アフターサービスの一環、明日を生きていくために乗り越えるべき壁として。

繋がりは断たれた。
少年の手から、最後の痕跡が消えうせた。本当に全て終わってしまったのだと言われて、再び膝をつく。ナイフを落とし、滂沱の如く涙を流し、夜空へ向けて咆哮する。

全てが終わった。
少年の戦争は、これにて終結。

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