第63話『水泳』
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も、授業だから泳げなくても教えてくれるって」
「違うの。泳ぐってことがわかんないの!!」
「あ、それは手に負えない」
まさかの"泳ぐ"という概念すらも無かったことに、頭を抱える晴登。これでは、いくら授業だろうとカバーできない。公共プールは少し遠いから平日で行ける訳じゃ無いし、これは手詰まりだ。
「……何とかならないかな」
「……そうなって欲しい」
今回ばかりはこれといった打開策が見当たらない。潔く、明日を迎えるしかないようだ。募った不安に、二人は大きくため息をつく。
「…じゃあ今日はこの辺で解散するか。お前らは水泳頑張れよ」
「あ、ありがとうございます」
「それとな三浦・・・」
解散を命じた終夜が晴登の元にやって来る。何かと思う晴登を他所に、耳元で小さな声で、
「水泳の授業は男女一緒だから、手取り足取り教えてやりなよ」コソッ
「な、いきなり何を…!?」
「それに気になるだろ? 結月ちゃんの水着姿とか」
「いや、その、別に──」
「まぁいい。じゃあな」
手を振って帰って行く終夜に、晴登は何も返せずに立ち尽くす。自分でも頬が紅くなっているのがわかった。
「何話してたの、ハルト?」
「え!? あぁ、その・・・特に何も……」
突如結月にそう訊かれた晴登は、慌てて応える。お陰で凄く怪しい返答だ。結月が訝しげに顔を覗いてくる。
晴登は目を逸らしながら、そそくさと昇降口へと向かう。結月も詮索を諦めたのか、トテトテと後ろをついてきた。
「水着…か…」ボソッ
口に出すと恥ずかしく聞こえる。終夜の言葉が中々頭から離れない、ピュアな晴登であった。
*
「よっし、水泳だ!」
「元気だなぁ」
「そりゃ、夏は水泳だからな!」
「まだ6月だけど」
時は進んで、翌日の体育。空は雲一つない快晴で、水泳するにはうってつけの日だ。蒼い空と燦々とした太陽、思わず夏と錯覚してしまいそうになるほど暑い。
そして、我々男子は教室で、女子はプール近くの更衣室で着替えていた。
「ほら、プールに行くぞ、晴登!」
「着替えるの早くね!?」
早くも水着姿になった大地。やる気満々ということが見て取れる。
「先行ってていいよ」
「そうか、わかった」スタスタ
大地がプールに向かうのに合わせて、他の男子も動く。どうやら、晴登以外は全員着替え終わっていたようだ。
「マジで…?」
皆のやる気に驚きつつ、晴登はそそくさと着替えた。
「うわぁ…!!」
プールに着いて開口一番、晴登は感嘆の声を漏ら
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