第二十話 新妻その五
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「結婚することになった」
「おいおい、本当かそれ」
「ああ、いい人でな」
ハンナの人柄のことは正直に話した。
「それでな」
「結婚までか」
「話は整ったぜ」
「また嘘みたいにすぐに決まったな」
「よく初対面で決まりましたね」
順一も言った、三人共その言葉は真実だとわかってそのうえで久志の話を聞いていた。
「結婚まで」
「あの奥さんが事前に話していたにしてもな」
「それでもです」
「そこはあれだな」
「あれとは」
「俺の魅力に痺れたんだな」
久志はまた嘘を言った、事実を常に話すのではなく事実の一部を嘘で隠して仲間達に話をしていた。
「わかる人にはわかるんだよ」
「それは嘘だよね」
すぐにだ、源三は久志のその言葉には笑って返した。
「君が受け入れたのかな」
「あの人をか?」
「だって君はまだそんなに魅力的じゃないからね」
「まだかよ」
「人って急に魅力が出たりするよ、けれどね」
今の久志はというのだ。
「嫌われるタイプじゃないけれど」
「人を痺れさせる位にはか」
「いかないからね」
そこまで魅力的ではないからだというのだ、尚三人共ハンナの事情は彼女の名前の時点で知らない。
「まだね」
「まだかよ」
「これからはわからないよ」
「これからはか」
「うん、けれどね」
「それでもか」
「今はだからね」
強い、カリスマ性とまでいく魅力は出していないからだというのだ。
「そこまではと思っていたよ」
「カリスマなあ」
「うん、ただ君は誠実ではあるね」
久志のこの本質はだ、源三は既に見抜いていた。
「それは間違いないね」
「そうか?けれど俺はな」
「いい加減だっていうんだね」
「そう見えるからな」
「いい加減な反面ね」
「誠実だっていうんだな」
「人といつも正面から向かい合っているから」
だからだというのだ。
「きっとあの人もね」
「受け入れてくれたのか」
「そうだと思うよ」
「成程な」
「それでね」
さらに言った彼等だった。
「君はやがてなんだ」
「ああ、あの人とな」
「結婚するね」
「その話は決まったさ、楽しみだよ」
遠い彼方に確かなものを見る目になってだ、久志は源三だけでなく順一と智にも言い切った。
「その時がな」
「じゃあその時はね」
「私達も式に呼んで下さい」
「祝わせてもらうからな」
三人でその久志に言った。
「是非共な」
「その時を心待ちにしています」
「楽しみにしてね」
「そうしなよ、その時までにな」
久志は三人の言葉に笑顔になってそれからさらに言った。
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