溝出
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を巻き上げた。
「…ごめんなさい。上手に説明できないんです。勿体ぶってる…とかじゃなくて」
電車の轟音に掻き消されそうな幽けき声が耳元で聞こえた。……遠くに、サイレンの音が聞こえる。
―――サイレンの音?
「………奉」
「ん?何だ」
「きじとらさんへの定期連絡は?」
電車が巻き起こす強い風に前髪を弄ばせたまま、奉が静かに固まった。
「………あ、忘れた」
「忘れたじゃねぇよ!あれ、ほらあれサイレン!!ちょっ、あれ」
駅舎のないホームのフェンスに身を乗り出してパトカーを目で追う。完っ全に病院の方へ向かっている。
「どうすんだよアレ!変態センセイ捕まっちゃうぞ!?」
「むしろ今までどうして捕まってないんだろうねぇ、変態なのに」
「……まぁそうだが!!でもそれはこのタイミングじゃないよな!?」
奉は少し何かを考えるような顔をしたが、ぷしゅぅ、と間抜けな音をたてて開いた電車の乗降口に踏み込んだ。
「ま、いいか」
「よくない!!戻れ!!」
この馬鹿野郎を掴んで降ろそうとしたが、奴はさっさと車両の奥に乗り込んでしまい、ポールにしがみ付いて離れなかった。車内で揉み合っているうちに、再びぷしゅぅ、と間抜けな音を立ててドアが閉まった。
その日の深夜、変態センセイグループLINEに『ひどいよ』と一言だけ書き込まれていた。
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