溝出
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まうのだ。
だから俺は彼女が語ってくれない時は、注意深く辺りを探る。
「……お!結貴く〜ん!早かったね」
陽の光を照り返して煌めく大きなガラス窓の手前で、変態センセイが手を振っていた。
「ははははは皆、僕の地下室へようこそ!!」
ブラッドベリの短編みたいなことを叫んで、変態センセイが勢いよくクラッカーを鳴らした。仕込まれていた紙吹雪とカラーテープが奉の黒髪に全部着地する。奉は不快げに首を振ってカラーテープを床に落とした。
「……おい、今時お茶会によばれた上にクラッカー鳴らされたぞ……」
「よかったね、キチガイ帽子屋とかいなくて…」
「キチガイドクターなら居るじゃねぇか目の前に」
「二人とも…本人の前でそれは少し…」
静流もうっかり失礼発言をしてしまっている。そして恐らくそれに気が付いていない。というか俺以外の誰も気が付いていない様子なので、黙殺することにする。
「嬉しいなぁ、ここに人を招くのは初めてなんだ」
本当に、心から嬉しそうに変態センセイこと薬袋氏はウェッジウッドのカップに琥珀色の液体を注いだ。素朴な白のカップから湯気が立ち昇り、不吉に螺旋を描く。
死人が立ち泳ぐ水槽に囲まれた白木のテーブルセットは棺桶のように縦に長い。冷たい木製の椅子に腰掛けた静流は、最前から目が泳ぎっぱなしだ。
「ああ、後ろの水槽?これは僕の妻達だよ」
「…………………い、一夫多妻ですねわかります」
なに云ってんだ静流。そこは普通に悲鳴とかでいいんだぞ。
ていうか俺こういうの本っ当に分かんないんだけど、大して面識のない女の子が来るというのに、人体標本置きっぱなしってどういう神経しているのだろうか。そんなだから大病院の御曹司だというのに彼女の一人も出来ないのだ。
……ああ、こいつネクロフィリアだった。
「変態センセイよ、一つ宣言しておくぞ」
「ん?どうしたんだい、奉くん」
「俺からの電話連絡が30分以上途絶えたら、きじとらが警察に駆け込む手筈になっている」
事前準備バッチリかよ!どうりでこんな色々な意味で危ないお茶会に平気で乗り込むわけだ。
「ははは流石僕の親友、奉くんだなぁ。好きだよそういう抜かりないところ!…結貴くんは何か仕込んできた?」
「へ!?あ、一応催涙スプレーを数本…」
「あはあはははは数本て!どんだけ泣かせる気だよ!!」
―――あ、すげぇ笑ってる。ここ笑うとこなんだ。
「…馬鹿め。催涙スプレーでは茶に毒でも仕込まれたら仕舞いだろうが。俺のようにリトマス試験紙とか持ってこい」
「うっわあ、奉くん抜かりないぃぃ!!…で、静流ちゃんは何を持ってきたのかなぁ!?」
「ひっ……そ、その……防犯ブザーを……」
もうガックガクに震えながら涙目になっている。しかも防犯ブザー取り出して見せている。駄目だろ変態にブ
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