溝出
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、大勢で居る時のあたふた振りが嘘のように自然に俺に甘える。さっきまで伏せられていた長い睫毛の目元は、今は子猫のような上目遣いに変貌していた。
この仕草と、眼差しが物語っていた。男に寄り添ったことがない女の子に、こんなことが出来る筈がない。
鈍い痛みが胸に広がる。同じように、軽い焦りが胸を満たした。
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水には非ず。
俺は一体、何に拘っているのだ。少しずつだが、状況は動いているのだ。そして俺たちはもう元の『ちょいちょいつるむ同級生』には戻れない。俺は彼女の頬に手をあてて、少し引き寄せた。静流は目を閉じた。…両手が震えた。
その瞬間だ。俺達のスマホが一斉にメッセージ受信音をけたたましく鳴らしまくったのは。
うっわ最悪。二人同時ってことは十中八九『あの』グループLINE。それは今一番拒否りたい人物…奴だ。
「………絶対、変態センセイだ。既読つけんなよ」
と云い終わるより先に、静流はトークを開いてしまっていた。
「………あ、ごめんなさい」
「……ま、いつ来るかいつ来るかと、毎日戦々恐々としてたところはあるからな……」
「……却ってスッキリしたねぇ。注射が終わった直後のような」
「……注射嫌いだったのか、奉」
最初に既読をつけてしまった静流は申し訳なさそうにしているが、3人で未読無視を決め込んだところで、あの男はどんな手を使ってでも『お茶会開催のお知らせ』をぶっ込んでくることだろう。
「問題は、そうだねぇ…変態センセイが、静流に対してどう出るか…だねぇ」
「そうだな、あの変態センセイがどこまで『晒す』かだな…」
「え?え?何なんです?あのひと、本当に変態なんですか?どう変態なんですか?」
本当に変態かと聞かれれば、日本では稀有なレベルのド変態なのだが、どう変態なのかを説明するわけにはいかない。俺は奉の横顔をちらりと盗み見た。
「女に聞かせられる内容じゃねぇんだよ。理解しろグズが」
ちょっ、お前っ…静流が『え、えぇ…』みたいな顔で俺を見始めたじゃないか。
「あの…結貴、くん…」
あとで聞かせてくれる…?と耳元で囁いて、静流は顔を真っ赤にして俯いてしまった。…違う、そうじゃないんだ。君が思うような『ちょっとえっち』程度の正常な変態じゃない。奉は『女に』と云ったが正確には『俺達以外に』だ。
「はン、知ったら子供孕まされてホルマリン漬けにされかねんぞ」
―――なにぶっちゃけてんだよお前ええぇ!!?
「え?え?……あの、やっぱり今聞かせて?」
変な汗でびっしょりの俺を、静流が覗きこんできた。この子は時折、極端に空気を読まなくなる。
「……いや、気にしないで。冗談…みたいなものだと思って……」
時折『…やっぱりだめ?』と蒸し返す静流をなだめながら、俺
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