第百六話 カイザーリング艦隊の休日
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「それに、働かなくて給料が貰えるなんて、こんなに素晴らしい事はないぜ」
レストランに笑い声が木霊する。
「そう言う事だ、卿等は未だ若いんだから、急ぐことはあるまい」
「そう言う事だよ。少尉殿」
「艦橋で虐められたら、お姉さんが慰めてあげるからね」
「慰めるじゃなくて、取って喰うの間違えだろう!」
「一々突っかかってくるんじゃないよ。お前を喰ってやろうか!」
「おー怖っ、姐さん勘弁」
「「「ワハハハハ」」」
レストランは賑やかであるが、ラインハルトはこのノリについて行けない。何故なら殆ど人付き合いをした事のない、言ってみれば引きこもりに近い精神構造になっていたために、何故此奴等はこうも馬鹿なことをするのだろうかと言うだけしか考え着かないのである。
キルヒアイスは揉みくちゃにされながら、キルドルフ大尉以下が孤立しがちなラインハルトと自分を心配して、殊更陽気に宴会をしてくれていることが判り感謝していたが、ラインハルトが眉をひそめて憮然とした顔をしているのが、キルドルフ大尉以下に失礼に当たるのにと考えていた。
散々飲み食いした後で、一応礼を言い、キルヒアイスは確りお礼を言っていたが。ヘロヘロになっても、未だ暫く此処で飲みまくる陸戦隊員達と分かれてラインハルトとキルヒアイスは帰艦した。
自室に戻ると、ラインハルトはキルヒアイスに愚痴をこぼし始めた。
「案の定、碌でもない宴会だった、俺が未熟だと!あの脳筋共は判っていない!!」
「ラインハルト様、世間一般では15歳は未だ未だ子供ですから」
「俺は違う、子供の心なんぞ、10の時に捨ててきた!」
「能力の無い参謀共と比べても俺の方が遙かに優れているのに、記録係とは!俺に任せれば叛乱軍のカプチュランカ基地なんぞ、上空からの攻撃で爆砕するモノを。只パトロールだけで何もしない!救いようがないと思わないか?」
「ラインハルト様ほど参謀達も賢くは無いのでしょう、
暫くは大きな心で見てあげる事も大切だと思いますよ」
ラインハルトは思う。キルヒアイスは誰にでも優しいな、しかしその優しさは、俺と姉上にだけで良いのになと。
「そう言うモノかな」
「そう言うモノです」
「それにしても、二度とあんな宴会は勘弁だ、次回からは居留守を使おう」
「ラインハルト様、人付き合いも大切だと思いますよ」
「いや、低脳共と付き合うだけで、俺の精神が逆立つ!」
仕方が無いかと、キルヒアイスは心の中で溜息をつくのであった。
宴会の最中にバーゼル少将は、地元の麻薬組織と会談を終え、サイオキシン麻薬10トンを受け渡し料金2000万帝国マルクを手に入れホクホクした表情で帰艦してきた。しかしその取引を闇から監視する人物達が居ることを彼等は全く気がつかなかったのである。
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