第3章 儚想のエレジー 2024/10
19話 足取りは重く
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でいる。日常の会話も途絶えたのではない。他愛ない遣り取りは今でも途絶えないのに、攻略についての話題はまるで禁句であるかのようにヒヨリから聞かなくなった。それもまた、やはり気遣いなのだろうか。
「………だめ、ですか?」
「どうだろうなぁ」
不安そうな問いに曖昧な返答で誤魔化すものの、当然の事ながらティルネルはそのままでは済ませないだろう。思い返すと、そもそもこの案件さえティルネルが俺とヒヨリがPTを組む口実として仕組んだものなのかも知れないとさえ思えてくる。それについて非難するつもりもないが、これまでの不文律だった不可侵が瓦解するのを忌避しようとする感情も否めない。
もちろん、この状態は互いにも好影響であるとは考えていないのだが、流石に現状を突発的に、且つ自発的に打破するには並々ならぬ精神力を要する。
………だが、もうこれ以上は待ってはくれないのだろう。
「俺が答える前に、一つだけ聞いていいか」
「………はい?」
抽象的な質問にも関わらず、ティルネルは構わず耳を傾ける。
「今の俺は、ヒヨリの隣に居ても良いのか?」
「……………」
発言した自分でも戸惑ったが、それは問いの体をとった弱音だった。
これでティルネルに返答が出来なくても、それを責めるつもりはない。ただ誰かに聞いてほしかっただけの戯言に過ぎない。それを笑われようと、叱責されようと、受け止める覚悟は一応しているつもりだった。
「リンさんが今悩んでいることについては、ヒヨリさんから伺いました。………それと、クーネさん達やアルゴさん、グリセルダさんご本人にも………」
だが、ティルネルの返答は自嘲気味な予測を大いに反するものだった。
テイムモンスターに含まれる彼女は、これまでに多過ぎるほどのイレギュラーを俺達に見せてきた。だが、この事例――――というには、彼女を軽視しているような気もするが――――は、あまりにも心理的な面に偏りすぎる。これまでのティルネルの素行にも彼女に感情が備わっていなければ説明のつかないようなものは枚挙に暇がないものの、これほど大掛かりな単独行動は類を見ない。
「お話をお伺いした皆さんのお言葉は敢えて言いません。ですが、リンさんの抱えているものは決してヒヨリさんを避ける理由には為り得ないと思います。それは、他でもないご自身が一番理解されているんじゃないですか?」
否定の隙も無い。そもそも、ヒヨリの為人について理解しているつもりなのだから尚更だ。
俺が誰かを殺したと聞いたヒヨリは、しかし決して俺を拒絶しようとはしなかった。それでもそばに居ようとしてくれる幼馴染の存在にどれほど救われただろうか。今もこうして生き続けていられるのは、きっとヒヨリが俺を支えてくれ
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