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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 儚想のエレジー  2024/10
19話 足取りは重く
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紙に記された情報を見るに、それなりに可能性の幅は狭まったと言って差し支えないだろう。
 しかし俺自身が第一層主街区を拠点にするプレイヤーに明るくない以上は、アルゴを頼って該当する候補を炙り出す方が効率的ではあるが、やや興が乗ったのだろうか。攻略の最前線から退いてから然して急ぐ用事もないまま日々を過ごす俺にとってすれば、時間だけはいくらでも確保することが出来る。自分で歩き回って情報を集めるのも悪くはないと思い至ったのである。


「………このくらいなら俺でも探れるかな。散歩がてら様子を見てみようか」


 メモに発見者であるプレイヤーの名前が記載されていなかったのは、エギルでも把握しきれなかった顧客だったからとしておこう。ともあれ、第一層へ向かわなければ事は始まらない。気分転換というには雪ぎ切れるか不安になるくらいには気が重いところだが、思考の方向を変えられる口実があるというのは有り難い限りだ。ともあれ現地へ向かおうと部屋を出ようとする矢先、ティルネルの声で呼び止められる。


「あの、リンさん」
「どうした?」
「えっと、ですね………」


 しかし、呼び止めた側であるティルネルが言い淀み、話が一向に進展しない。
 数秒の空白を設け、失礼を承知でラグを疑い始めた頃にようやく、意を決したように言葉が続けられた。


「………えっと………私が同行するのは当然として、ヒヨリさんもご一緒に連れていってほしいんです………」


 意外な申し出に、思わず言葉を失った。厳密には、その発言に虚を突かれたのではなく、それまでの記憶を鑑みてと注釈するのが正しいのだろうが。
 端的に言えば、俺とヒヨリはグリセルダさんの一件があってからPTを組んで行動する機会が減ったのだ。他者を殺害した自分に危機感を抱き、自ら一線を引いた。そしてヒヨリは言葉にしなくても、その手の機微を察知する直感に秀でた感性を有する。その上で、踏み込むべきではないと判断したヒヨリはそっとしておいてくれた。そして然るべきタイミングで、本当に()()()()()()()()()寸前で強引にでも救い上げてくれた幼馴染には感謝の言葉もないが、それまではヒヨリの静観の姿勢を崩さない状況に甘えてしまっていたのが実情となる。
 その名残として、ヒヨリはクーネ達のギルド《片翼の戦乙女》に出張しては臨時メンバーとして前線で剣を振るうその陰で、俺は独りコソコソと誰にも必要とされなくなった隠しコンテンツの捜索を女々しく続ける構図が成立したのである。前線に立ち続けるヒヨリはソロプレイヤーを貫き通しながら、それでも攻略組の花形と呼ぶに相応しいレベル帯を維持しているとアルゴやクーネや、物好きなプレイヤーやらギルドが出版する新聞からも聞き及ん
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