第3章 儚想のエレジー 2024/10
19話 足取りは重く
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!?」
「ワンパターン過ぎるんだよ。だいたい頼み事を持ち掛ける時はいつも同じ事言ってるだろ」
そして、やや仕事中毒に過ぎる。自身のスキルで作成するポーションの余剰分をエギルを始めとする店主に卸しては、資金を稼ぐといった生産系プレイヤーのような商魂を見せる程度には仕事熱心なのだ。フィールドやダンジョン内に生成される苔や草花から作成するだけあって元値が発生しない点を鑑みれば空恐ろしい金策の手段ではあるが、テイムモンスターが独自に販路を拓くというのもいかがなものだろうか。それについて誰も違和感を抱かないところにプレイヤーのSAOに対する慣れというか耐性を感じずにはいられない。
とはいえ、彼女もまたそれなりに長い期間を共に過ごした仲間とも言える間柄だ。こんな人間でも頼られるのは悪い気はしないし、必要とされるだけ救われる気にもなれる。何より余分な思考を排せるのだから。
「エギルさんのお店の常連さんからの情報だそうです。人族には加工することが叶わず、エルフの失われた技術でのみ精製出来るとか………出来ないとか?」
「ただの雑草の可能性もあるのか」
ティルネルの情報を精査し、方針を策定する。
とはいえ、出来ることはエギルと接触するくらいか。恐らくは噂程度に聞いた程度の話を、ポーションを納品しに来たティルネルに聞かせたのだろう。具体的な内容が知れたならば、より有用な商品開発の為にエギルは入手した情報を余すことなくティルネルに伝える筈だ。阿漕な商売で名を馳せる彼ではあるが、情報を売り物にする真似はしない。というより、この場に於いては情報屋の真似事をしたところでメリットがない。つまりはエギルも全貌を理解してはいない筈だと推測される。
こうなれば情報を追跡して発信源を突き止めて聞き取る他の手段はまず在り得ないだろう。《他のプレイヤーから情報を得るNPC》について慣れ始めた自分もSAOに順応しているのだろうか。やや癪ではあるが、それも已む無しとしておくことにする。
「まあいい。まずはエギルから辿るしかないか」
「あ、一応なんですけど……エギルさんから情報提供者さんの所在は聞いてるんです」
「……ほう?」
訝しむ声が臆面もなく漏れ、ティルネルはむっと表情を曇らせる。
薬学を修め、エルフのみ扱える特殊スキルを幾つも操り、尚且つ家事もこなす。ティルネルは総じて優秀なのだが悲しいかな、いざという時に詰めの甘さが露呈するタイプなのだ。そんな彼女が気を利かせた場合など、警戒せずにいられるだろうか。いや無理だろう。
「ちょっとその視線の意味についてはあとでお話を聞かせて貰いますけど、とにかく信頼度だけは確かです。今回はこうして目的の方がお住まいの場所までメモしてもらったんですから」
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