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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第37話 天元の存在
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ってたのは桑原先生と聞いてますから……」
「ホホホ。にしてもプロでなくとも参加できる数少ないオープンな国際棋戦のお株をまんまと奪われてしもうたの」
「梯子を外された三星火災杯の関係者は面子を潰された和-Ai-に対して激おこぷんぷんまるでしょうね……」
「残りの日本枠の残りにしても一柳先生や緒方先生を始めとした対局禁止令に不満を持ってたプロ棋士が黙ってませんよ」
「それにしても……まさか国際棋戦の舞台にまで正体不明の棋士が上がってくるとは」
「フム。まだまだ何かやらかしそうじゃの」
「しかし和-Ai-はプロにもアマにも自分に勝てそうな人間がいないので、負けることがなければ今年いっぱいでネット碁を辞めると宣言していますが?」
「となると泡沫の夢か……それとも運命を変えるような一手があるのか――」
パチッと桑原本因坊が手合いが終わり片付けられた盤面の中央“天元”に黒石を置く。
「突然現れた和-Ai-という存在はまるで天元に打たれたこの石のようじゃ」
「日本、中国、韓国、そして三国を追う台湾、中央から四隅をニラミながらも、その手はネット碁を通じてプロとアマチュアの垣根を越えて世界にまで広がっておる。
まさに盤上を超越した一手よ。ただの天元の一手ではないわ。とてもヒトの仕業とは思えんわい」
「では碁の神様か何かですか?」「フム。なにか大きな意志を感じたりはせんかの」
「碁の神様のお気持ちなど、凡人の私にはさっぱりわかりませんな。お先に失礼させてもらいますよ」
「私も失礼します」「では私も」「あの……桑原先生は?」
「あっちがそろそろ決まるかもしれん。もうしばらくここで待つ」
「にしても碁の神様がおるとしたら随分と“孤独”じゃろうが少々戯れすぎるわ……」
どことなくあいまいな表情を浮かべ桑原が言い放つ。その言葉を聞くものはいない。
「今年いっぱいでアレの領域に届くほどの棋士が育つかどうか見ものよの」
しばらくすると、そこに6つボタンの三つ掛けのダブルステッドの白スーツを決めた濃いカラーの入ったシャツに薄い色のネクタイを合わせたホスト風の男……ではなく緒方十段・碁聖の二冠が姿を現す。
「座間先生との対局、今終わりましたよ」
「そうか。本因坊戦の挑戦者は緒方クンに決まったか」
「五番勝負の挑戦手合いでは倉田のヒヨッコに二敗と追い詰められておるが大丈夫かの? 緒方“十段”?」
「昨年のヒヨッコ坊主にも楽しませてもらったが、キミもまたワシを楽しませてくれるんじゃろ?」
「一昨年、封じ手にうろたえたキミは愉快じゃったかの。期待しておるよ」
「くっ、言ってろ。ジジイ。首を洗って待ってろ」
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