暁 〜小説投稿サイト〜
和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第31話 一柳棋聖 vs 奈瀬明日美
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とはある。けど――。

 未来は今の延長だ。だからこそ、今を大切に、悔いのないように。

 手が見えた。コウを見せて、黒の利きを先手で無くそうとする。もちろん黒は受けない。

 この右下の連打はかなり有効で、白が有利に進んでいるように思える。
 けど一柳棋聖はフリカワリの損得判断が非常に明るい。油断なんてできない。
 これで黒はやれると見ているのだ。対局の空気が変わる。一柳棋聖も本気だ。

 これで隅は黒の左右どちらかが取れるかたち。
 黒が隅を捨て石に、右辺の白を狙ってくる。

 これで白が取れているの? 味が悪くて怖い打ち方だ。

 見た目は悪いのに手が出せない驚きだった。一旦引くしかない。
 黒が右上の死を見せながら右辺を味よく取った。けど白だって狙ってた左辺のオキがある。

 左辺の黒は眼を作ろうとせず白を破りにくる。けどこれで隅の手段はなくなった。

 この手を受けると、もう白のコウ立てが無い。右下からの力技で右辺を取られた。

 また大きなフリカワリになった。こうなると味が悪いって思った手が効果的だ。
 お互いに50目レベルのやり取りで、損得の判断にはプロでさえ時間がかかる。

 けど逆ヨセで大きい。

 えっ!ノータイムで!?やっぱり黒の方が大きいの?? 

 白も勝負手を放つ。けど、手を……離せない。呑まれちゃダメっ!

 黒の手を厚く受ける。白はコウを残しキリを狙う。
 キリが生じたが、一柳棋聖は損をしないことを見こしている?
 白は20目近く増やしてるけど、そっちの辺を先手で打てた方が大きいの?

 タイトル保持者が持つ強烈なプレッシャー。
 けど、私だって今や女流棋聖なんだ!
 女流を代表する棋士の一人だ。相手が誰であれ簡単に負けるわけにはいかない。

 黒は白が残したコウを先手で利かすため準備をする。
 もう白は勝負するしか手が無い。

 形勢が良いときに、こういったフリカワリは普通は避けたいはずなのに――。

 一柳棋聖はミスを恐れない。和-Ai-の碁を意識してるのが分かる。
 黒中央の減り具合も、かなり大きく見える。
 けど活きていた石がコウになったのが白のマイナス。
 黒はコウ立てがたっぷりある。コウ立ての為に2目損の手を打つ。

 比較的小さく抑えたけど随分と黒には余裕がある。

 必死に抵抗したけど盤面は15目ほど黒地が多い。ここで投了する。

「――ありません。ありがとうございました」

 一柳棋聖は大きなフリカワリになっても損をすることがなかった。
 むしろ正確に得な道を選んでいる様に思えた。本当にすごい判断能力だと思う。

 その盤面の全体を判断する視野の広さに経験の差を感じた。

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