暁 〜小説投稿サイト〜
和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第24話 シオンの碁
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は“哀しみ”というものだった。
 囲碁を愛しているにも関わらず、互いに高め合う相手がいない者の慟哭だ。
 そんな棋士に会ったのは初めてだった――」

「碁は一人では打てんからの。孤高の才能を受け入れる器が今の棋界にはないか。残念じゃ」

 そして彼女はプロになることなく囲碁の世界から身を引いた。
 僕は父の反対を押しのけてアマチュア参加して世界囲碁選手権に出るべきだったと後悔した。
 進藤を追うために海王中で強引に大会に出たのはその時の心残りがあったからこそだ。

 父との対局の置き石が3子になって、2子に減ってもプロになる決断がすぐにできなかった。
 彼女のことがあったから僕はライバルの存在に人一倍強くこだわっていたのだと思う。

 プロになってから彼女がアイパラTVという番組でアイドルとしてデビューしていることを知った。

「シオン先輩ってデザートは白と黒のものしか食べないってホント?」

「確かに昔は豆大福とコーヒーゼリーしか食べていなかったが……今は違うぞ」

 テレビに映る彼女の姿は輝いて見えた。それこそ囲碁を打っていたときよりも……ずっと。

「アイドルになって、世界が輝いて見えたんだ。でも、きっと最初から輝いてたんだろうな」

 そう言って笑顔で歌う彼女を見て……もう彼女と囲碁を打つ機会は二度とないのだろうと諦めていた。

 彼女は白と黒の世界を離れてライバルたちと高め合い自分が輝ける場所を見つけたんだと悟った。

 だから週刊碁で彼女の名前を見つけたときは驚きを隠せなかった。

 けど彼女の活躍を知ったときには既に予選で関西の石橋九段に敗れ本戦出場を逃した後だった。

 僕はまた彼女と対局することができなかった……。

 そして彼女は僕が思ってた以上に強かった。昔は分からなかった彼女の強さが今になって分かる。

 早碁とはいえ予選の持ち時間は1時間、本戦は2時間ある。
 一次予選、二次予選、最終予選、本戦とプロを相手に11連勝。
 王座、名人を破っての棋戦優勝。15歳、中学生の棋戦優勝はプロでも存在しない大記録だ。
 それを成し遂げてしまった。彼女は今のボクより強い。

 彼女との対局を望むなら「プロになってから10代で名人になってみせろ」と言った父の言葉を思い出す。あれは子供を奮起させるための大袈裟な例えだと思ってたが、父は本心で言っていたのかもしれない。

 進藤がボクを追ってくるように、ボクは昔から彼女を追っていたのだ。

 和-Ai-、父を倒した正体不明のネット棋士。

 自分をライバルと認めなかった東堂シオンが対局を望む相手。

 彼女が目指すならボクも和-Ai-と本気で戦いたい!

 そして、もう一度「ボクと打とう!」と彼女に声をか
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