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歌集「春雪花」
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 くぬぎの実

  熟れて落つれば

   ふる里の

 景色に君を

    想ふ頃かな



 公園に植えられた椚…団栗は日に日に大きくなり、茶色く熟れて行く。

 昔は山に入り、団栗だけでなく…山栗や妛など取ったものだ…。

 そんな田舎の町並みが…落ちた団栗を見て蘇る…。

 稲刈りの終えた田に夕暮れの紅…そこに彼の後ろ姿が浮かび上がる…。


 会えない寂しさが…どこまでも伸びて行く…。



 目を覚まし

  君そなかりて

   虫の音に

 忍びてもなお

   あまりあるかな



 彼を見たような…そんな気がした途端、夢から目覚める…。

 辺りは未だ暗く…想う故の寂しさが不意に覆い被さる…。

 秋の虫は延々と鳴き…その声は闇に悲しみを振り撒くようで…。

 彼への想いは振り切れず、堪えようとしても溢れる涙…。


 許されるなら…彼と共に在りたい…この命が尽きるその時まで…。




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