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和-Ai-の碁 チート人工知能がネット碁で無双する
第二部 北斗杯編(奈瀬明日美ENDルート)
第01話 変わった未来
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H13年5月12日 若獅子戦初日 side-Asumi
進藤のバカは今日も来てない。先日の大手合いも病欠の連絡など来ていなかったらしい。
和谷は苛立ちながら森下先生の研究会にも来ていないこと告げた。
そのとき塔矢アキラが腹立ち紛れに拳を壁に打ちつけるという珍しい光景を目撃し、私と和谷は逆に冷静になることができた。
初戦の相手は院生の足立くんだった。足立くんは明らかに精彩を欠いた碁で早々に投了した。私は去年のプロ試験本戦で足立くんには僅差で負けている。だから今日はリベンジのつもりだった。
対局しながら今年のプロ試験に対する足立くんの迷いが伝わって来た。
去年のプロ試験の合格者は12歳の越智、13歳の進藤、そして同い年の私。
しかも越智と進藤は院生で足踏みすることなくプロとなった。自分の碁に自信が持てないのだろう。
一つ年上の飯島くんは大学受験に専念する為に3月に院生を辞めた。
私だって彼に出会わなければ、同じような気持ちで将来に悩みながら燻ぶっていたと思う。
和谷は進学せず退路を断って下宿暮らしを始めて吹っ切れた様子。初戦でプロにも勝って手応えを掴んでいた。
私の午後からの二回戦の相手は山内克彦二段だ。私の調子は悪くない。
Ai vs saiの対局の代打ちの後から今まで以上に和-Ai-先生の声が聞こえるようになった。
相手の手をコスミで受ける。
一見すると隅に縮こまっているように感じるが先生の楽し気な声が聞こえる。
『勘違いしないで、私は隅の地を守るなんて考えてないの。
この手は相手を攻める足がかりを作っただけ。
単に隅にシマるのと、カカリに受けるのとは全く別物なのよ。』
此処で先生お得意のカケを打つ。左上隅を大きく地にしようと狙う。
『残念。きっと和-Ai-はそんなことは考えてもないわ。
ただ石の力を最大限に働かそうとしているだけ。
すぐに地だ、方向だ、なんて言ってるだけの連中は淘汰されるわよ。』
和-Ai-先生と出会って私の碁の定石は破壊された。
和-Ai-先生と打てば打つほど私の碁は自由になる。
最初は訳も分からず振り回されてたけど、少しずつ少しずつ空を飛ぶための翼を手に入れつつある。
囲碁は対話なりと誰かが言ってたけど、私は対局を通じて先生の声と対話を続けた。
気が付けば相手は投了し対局が終わっていた。
私は決勝まで進む可能性の高い塔矢アキラの碁を観に行く。相手は真柴だ。
塔矢アキラは普段の公式戦で見せる凛とした張り詰めた雰囲気がなく明らかに集中力が欠けていた。
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H13年5月12日 進
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