第六章 Perfect Breaker
加速する謎
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飛ぶよりも早く、壁の破壊音がその場を支配した。
もんどりうって倒れ、蒔風の背中が床にたたきつけられる。
「傷をつけても、それが常に回復するならば――――それすら上回る速度で殴ればよかったのか」
蒔風の反対側。
コールの背後に当たる部屋の壁が、理樹のバリアを浸透して行った衝撃に破壊されていた。
殴った方向とは、正反対の壁が。
後ろ脚の踏ん張りが、一つの衝撃として噴出された結果だ。
一体どれだけの回数で殴ったのか。
その威力をここで論じるのは無意味に近い。
朝の夏の日差しが、薄暗かった部屋を照らす。
その光量の差に、蒔風が目をしぼめる。
そして、慣れてきた頃には腹部に鈍痛を感じていた。
「ゲはっ!?」
「さて、俺は今何発蹴ったのかな?」
解るはずもない。
ただ、コールのパワーそのものはそう強くはないはず。
とするならば、それだけの回数が一発と感じるほどの刹那に叩き込まれたということ。
若しくは、一撃でも済むほどの速度で、蹴りが叩き込まれたか。
身体が崩れ、膝が着く。
必死に抵抗し、足に力を込めるもそれは無情にも降りていく。
しかし、それでもこの鈍痛を受けるには足りない。
転がる蒔風。
仕舞いには、上半身をも床につけ倒れてしまう。
大仰にその身体が吹っ飛ぶことはない。
だが、危険信号が彼の脳内を真っ赤に染め上げる。
腕が締め上げられたように、身体に引き寄せられてうまく動かせない。
何かの力が働いているわけではなく、身体の奥から来る痛みに、肉体が咄嗟にとる動きだ。
皮肉なことに、肉体を痛みから逃がすためのその防衛機能が、さらに危機的状況へと追い込んでいる。
「加・・・・」
加速開翼。
右半身を下にして横たわる蒔風。
目の前に立つコールに対抗するための、唯一自分がもつ手段。
「させないぜ」
だがその発動を、阻害される。
銀白の翼を、コールが掴んでいたのだ。
加速開翼はそこから吹き出す出力をブースターのように噴出させ、その突進力を全身へと変換させて加速する能力である。
そうすることでロケットのような直線的な加速だけでなく、クロックアップについて行くと言う複雑な行動をも可能にさせる。
しかし、どっちにしろその基点は翼だ。
その両翼をこのように鷲掴まれては、能力の使用どころではない。
思い切り掴まれた翼は、その部分が完全にコールの手の中に収められていた。
まるでひょうたんのくびれの様に、不自然にひしゃげている。
「グォァッ・・・・・」
鈍い、それでいて、逃れようのない痛みに蒔風が動けなくなる。
衝撃に倒れたショウや理樹はもう
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