第六章 Perfect Breaker
深まる謎
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朝である。
にもかかわらず、この部屋はいまだ日光の遮断された薄い暗闇に染まっている。
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・・・・・
その部屋の主はいまだにベッドの上で、甲高い電子音を無視して俯せになっていた。
夜も寝苦しい夏も、暦の上ではもう終わった時期ではあるが、そんなことも無視して今日も太陽が気温を上げていく。
「うっせ・・・・」
申し訳程度の薄い掛布団はすでにベッドから落ちており、男は短パンとTシャツで無様につぶやく。
これが冬なら分厚い羽毛布団をかぶって逃れるところだが、いかんせんそう言うわけにもいかない。
腕を振り回して音の方向へと伸ばす。
そうしてついに音の発信源を見つけ叩く。
ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ・・・・・
しかし、音は止まない。
目覚まし時計を抑えているものの、スイッチはもう二センチ先だ。指の一関節もないだけの距離だが、届いていないものは届いていない。
幾度か叩くが、やはり音は止まない。
それにイラついたのか、ついに部屋の主―――蒔風舜は目覚ましを掴んで無造作に放り投げた。
ガシャァ!という音がして、目覚まし時計が撃沈する。
ホームセンターで二時間かけて悩んだ挙句に買った物だと言うのに、朝の眠気の前にはそんなことは欠片も思考に上がってこない。
静かな室内。少し熱気が鬱陶しい気がするものの、まだ眠れる。
キィ・・・・・
『先日新たに発見された壁画に、明らかにサインとみられるようなマークを発見したとして学会では――――』
それから数秒。
目覚まし時計がご臨終した音を聞いてから開けたようなタイミングで、扉が開かれた。向こう側からは朝のニュースが流れてきている。
部屋の扉を開けた彼女は、とりあえず侵入すると腕を広げて肺いっぱいに深呼吸した。
その動作は教本に乗せたくなるほどの物で、まさしく「ザ・深呼吸」と言える代物だった。
ご覧ください。これが深呼吸でございます。
そしてせっかく朝起きてからまとめた髪の毛をほどき、ベッドの空いた場所を整え、そして
「・・・・何してんのお前?」
蒔風は起きた。
目の前にはフンスと気合なのか鼻息を吐き出すなのは。
だがなのははそんなことは気にしないで答えながらも準備を進める。
「添い寝の準備。邪魔しないでね舜君」
「それ本人に言うセリフじゃないよね」
「・・・・おはよう!!でもそのままで」
「起きます」
「あーん・・・・」
ムクリと起き上がる蒔風。
まだ朝は苦手のようではあるが、機嫌が悪いと言う程でもない。
本調子が出ない、と言うのが正しいか。
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