期を逸したお蔵入り短編
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魘されていたが、悪夢でも見ておったか?」
「いえ、夢の最後にメジェド様が助けてくれたので悪くはなかったですよ」
「む……むむむむ。我が眷属はお世辞が上手いな……むむむ。まぁ、いいのだが」
俺を起こしてくれた今の主神――メジェドはやたらと「む」が多い神様だ。
この神様は常にその全身を白くて大きな頭巾で隠している。その隠しっぷりたるや、頭巾だけで瞳と膝から下の足以外をすっぽり覆っていていっそオバケのコスプレのようになっており、言ってはなんだが傍から見たら何の生物か問いたくなる。
布を覆っている所為でいつも声はくぐもっていて、脚を除く体型も確認できないから性別は不明。食事も風呂も決して他人には見せようとしないためにこの神の正体はオラリオの神々の間でも謎に包まれている。
ただ、その足はかなりの美脚であるため女の子説が根強く、一部ではその中に絶世の美女とか幼女が入っているに違いないとカルト的な人気を誇っているようだ。俺の見立てでもこの神は女神だと思うが、真相が明かされる日は来るのだろうか。
「では顔を洗って食事を取るがよい。今日もダンジョンへ赴くのだろう?」
「そういえば今日のご飯はメジェド様の当番でしたね……前から気になってたんですが、その手のひらを外に出せない服でどうやって料理してるんですか?」
「むむむ、料理の時は、これは脱ぐ。邪魔であるからな」
「………………………」
今、ものすごく衝撃的な言葉を聞いた気がする。つまり、精一杯早起きすればメジェド様のご尊顔を拝める可能性があるということだろうか。俺の呆然とした表情に気付いたメジェド様はゆらゆらとせわしなく身体を揺らして急に早口になった。
「む、むむむむむ。べ、別に裸で料理している訳ではないのだぞガウル。この中とてちゃんと服を――むむむ、自分で自分の秘密を少し喋ってしまった。これ以上は何を聞かれても答えられぬぞ、むむ……」
どうもメジェド様は俺があられもない想像をしているか、若しくは自分が変態だと思われたと勘違いしたらしい。最近気が付いたがメジェド様はどうやら結構な照れ屋のようで、精神的に動揺すると「むむむ」が増えるらしい。
メジェド様はいつも自分の事をほとんど語らない。だから俺はこの神と出会って2年間、ずっとメジェド様について気付かされっぱなしだった。今でこそ普通に喋れているが、最初の頃はこの神と居るのが気まずくてしょうがなかった時もある。
しかし、それでいいとも思う。
知らないことよりも、相手の気持ちを判った気になって突き進む事の方が怖い。その事実を、俺は嘗ての主神の下を離れてようやく気付かされた。俺はあの人を分かった気になっていただけなのだ。だからこそ、多くの事に気付けないままファミリアを追い出されたのだろう。
今の俺には
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