―正義の味方―
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もはや心地よく響き渡る寝息のおかげで惑わされるわけがない。授業前なら叩き起こすところだが、あいにく今日の遊矢は全休だと把握している。
「せっかく海馬ランドのバイトの話、ドローパンでも食べながら聞こうと思ったのに」
遊矢の寝顔がよく見える対面のソファーに座りながら、手土産に持ってきていたドローパンを片手に明日香は小さく呟いて。それともそんなに疲れるバイトだったのかと、仰向けの遊矢の寝顔を起こさないようによく見てみれば……何やら苦しんでいる様子で。悪い夢でも見ているのか、何やらうなされている表情だった。
「……もう、しょうがないわね」
苦しむ遊矢とは対称的に少しばかり嬉しげな表情になった明日香は、遊矢を起こさないように慎重にその首を浮かすと、その隙に自らも遊矢が寝ているソファーに座る。そうして浮かしていた遊矢の首を自らの膝の上に乗せることで、ソファーではなく自身の膝枕を彼の枕として提供して。
「ちょっとやってみたかったのよね、膝枕……よしよし」
誰に語るわけでもなく呟いていた明日香はすっかり気をよくして、自らの膝の上にある遊矢の頭を、赤子にするかのように撫でてみせる。そのかいあってか緩やかに遊矢の寝息は、苦しんでいた時から普段の明日香がよく知る寝息に変わっていて、どうやらリラックスさせられたようだ。
……惜しむらくは、いくら見下ろそうとしても自身の胸部が邪魔で、明日香の視界からは彼の寝顔がまったく見れないことだったが。それに明日香自身は気づいていないものの、明日香が少しでも身を屈めれば遊矢の顔面にはその胸部が押しつけられ、呼吸困難による窒息が待っているだろう。幸いにも寝心地がいいと遊矢も太鼓判を押したソファーは、身体が沈みこむほど柔らかいタイプのために、そんな不幸な事故は起きなかった。
「おやすみなさい、遊矢……」
そうしているうちに、早朝から用事を終わらせてきた明日香も、あくびとともに目をつぶって。静かに彼へ語りかけた後に、彼女もまた意識を手放していた。
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