Side Story
少女怪盗と仮面の神父 47
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の救いは、養父母が惜しみない愛情を注いでくれたこと。
しかしその愛情も、今再び欠けようとしている。
義母の病死がアルフィンの心に残す影響は……計り知れない。
「あの子を生かして。決して、悲しい思いだけはさせないで」
「……無理よ。私はあの子の顔さえまともに見られないの。一緒に居ても、あの子が傷付くだけだわ」
「いきなりじゃなくて良い。ゆっくりで良いの。ちょっとずつ距離を縮めて、踏み込めないとしても離れていかないで。常に近くで見守っていて。そしていつか、あの子に……アルフィンに、本来の笑顔を返してあげて。それが貴方達への罰で、死に行く母親の願いよ。叶えてくれるでしょう? ブルーローズのハウィス。だって」
義賊は、弱きを助けてくれる人達、だものね?
悪戯っぽく笑うティルティアに、ハウィスは目を丸め
「……酷い人。そんな風に言われたら……逃げようがないじゃない……」
苦笑いと涙を一粒、静まり返った室内にポトリと落とした。
結果を言えば、ティルティアの願いは叶えられなかった。
王都へ帰る直前のエルーラン王子に「働かざる者食うべからず」と酒場での給仕職を勧められ、村に潜む第三王子と騎士団員の協力で料理を覚え、一人暮らしにも少しずつ馴染み。
ティルティア亡き後は、彼女が望んだ通りアルフィンの生活をできる範囲で支えようと、交わす言葉は少ないながらも怯える心を押し隠して家事全般を預かり、やがてグレンデル宅の合鍵を託されるまでにはなった。
しかし、エルーラン王子から管理を任された家と職場、グレンデル宅を行き来する毎日は、他ならぬアルフィンの強い要望で終わりを迎える。
「私は大丈夫です。村の人たちやハウィスさんにいろいろ教わりましたし、自分のことは自分でできるようになりたいんです。だから、ハウィスさんはハウィスさんのために時間を使ってください」
自身が養子だった事、ハウィスが自身を恐れている事を、アルフィンは既に知っていたのだ。もしかしたら、ティルティアとの会話を扉越しに聴いていたのかも知れない。其処らの大人よりも余程規則正しく丁寧な生活を実践して見せつける女の子には、痛々しいほどの気遣いが垣間見えた。
アルフィン自身が手助けを断った。なら、もう良いだろう。幼さ故に多少の不安はあるが、時折家を空けるとはいえ父親も村の人達も居るんだし、自分が家政婦代わりを続ける理由は無い。
何かあったら呼んでと言ってグレンデル宅の鍵は預かったまま、買い出しや料理の下拵えなど酒場での仕事を増やしてもらい、意味も無くネアウィック村の周辺を彷徨き、強めのお酒を飲んで深く眠る時間も増やし、グレンデル宅へ足を向ける回数も次第に減っていき……
心が、凍っていく。
誰もいない。何も無い。
母親を亡くしたばかりの子
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