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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 47
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エルナ国内だと、自殺したウェミアを合わせても、歴史上四人目か五人目くらいじゃないか? ウェミアの場合、政略結婚を機に貴族籍から外されるまでは、幸福の兆しとかなんとか言って実家にも勤め先にも重宝されてたって話だが……南西部(こっち)じゃ虹彩異色症(アルフィン)が生まれても何処吹く風なんかねぇ。東北部に比べると随分静かなモンだ」
 呼吸が、止まった。
 自殺した少女の大まかな生い立ちは聞かされていたが、結婚の話は初耳だ。
 あの少女が、既婚者? なら、夫は何処へ消えた? 職と同時に貴族籍を失くした……ブルーローズの所為で辞めさせられた後に配偶者を得たのなら、少なくとも経済面での救いはあった筈。あんな薄着姿で自殺するほど追い詰められていた「本当の」理由は何だ?
 まさか……
 「ウェミアも右目が青で左目が紫……って、おわ!? なんだぁ!?」
 二人分のお茶が置かれたテーブルをバンッと叩いて立ち上がり、驚くエルーラン王子を放置して家の外へ飛び出す。
 動けるようになって初めて直に見るネアウィック村はとても広く青く、眩しかった。一瞬立ちくらみを起こしかけたが、構わず敷地の外へ走った。
 通り掛かりの村民を適当に捕まえ、確かめたい事を全部訊き、目的地へ直行する。
 「……ああ……元気になったのね。良かったわ」
 其処に居たのは、まるでハウィスと入れ替わったかのように痩せ細った姿でベッドに横たわるティルティア。
 突然の来客に頭だけを動かして応じる彼女は、誰がどう見ても……末期だった。
 「知ってたの?」
 何を、とは言わないハウィスに微笑んだティルティアは、ハウィスを家に招き入れたアルフィンに、二人で話したいから室外で待っていてと言い含めた。
 文句も言わず、素直に部屋を出て扉を閉めるアルフィン。
 「……あの子を連れて来た人が、産みの母親はとても珍しい目をしていたって教えてくれたから。街の真ん中で自殺した女の子の噂を聴いた時、多分そうじゃないかなって思ってたの。後々になって、明らかに訳アリな移住民達(あなたたち)も来たし。あ、これは関係ありそうかな、って。ただの直感よ。でも、間違ってなかったのね」
 「だったら尚更、私に預けるのはおかしいでしょう。私は」
 アルフィンの、本当の母親を、殺した。
 そもそも、貴族の少女に望まぬ命を押し付ける切っ掛けを作ったのも自分だ。ブルーローズの罪は、目に見えなかった所にも及んでいる。
 「だからこそよ。貴女は償うべきだわ」
 「誰一人助けられなかった盗人が、何を償えると言うの!?」
 「失われた未来を」
 ハウィスの軽挙が原因で、貴族生まれのウェミアは立場も仕事も家族も未来も失った。
 ウェミアの娘・アルフィンは、肉親に憎まれ疎まれ金で売り払われ、遠くの地で赤の他人に育てられた。せめても
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