暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 47
[7/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たのも、南方領各地の貴族を長年翻弄し続けた実力を傘下に置きたいと考えたからだ。
 そう、彼本人が臆面もなくハウィスに告白した真相の数々を思うと、マーシャルの警戒は「ご尤も」と言わざるを得ない。
 「だからってっ!」
 「お願いよ、姉さん。少しだけ待ってて。私がもっともっと強くなって、貴女を王子の鳥籠から解き放ってあげる。貴女を哀しませるもの全部、貴女の周りから消し去ってあげるから!」
 「マーシャル……!」
 違う。そんなこと、私は望んでない。行かないでと何度も何度も訴えたが、結局マーシャル達は村を出て行ってしまった。
 クナート達男性陣は心も体も強い。エルーラン王子も認めた彼らの力は、国外でもしっかり通用するだろう。
 でも、マーシャルは違う。バーデルへ送る偵察部隊にマーシャルは含まれてなかった。クナート達に付いて行くと決めたのは彼女の一存だ。国外で身を護ってくれる物は、王子が用意した身分証明と渡国許可証だけ。クナート達が必ず護ってやると言い切ったが、バーデルはアルスエルナを敵視する国の筆頭だ。敗戦の影響でアルスエルナ以上に治安が悪いとも聞く。ほんの少しの油断で、また酷い目に遭って壊れたりはしないか。今度こそ喪うのではないかと、気が気でない。
 一緒に行けたらどんなに良かったか。鞘に収まっている短剣を手に取ろうとするだけで猛烈な吐き気に襲われ気絶しそうになる自分が、どうしようもなく情けなくて、腹立たしくて、煩わしかった。
 「私は……何処まで……っ」
 苦悩を抱えても時間は無情に進み、それまで村民に扮して世話をしてくれていた第二騎士団所属の女性騎士達も各々の「日常(ぎそう)生活(にんむ)」へ戻り、エルーラン王子が私生活用に買い取っていた一軒家には、ハウィスとエルーラン王子と騎士二人が残った。
 彼らも予定通りの視察を終えて、そろそろ王都へ引き返すかと準備を始め……不意に首を傾げる。
 「そういやお前、あの子供と何かあったのか?」
 「子供?」
 「……気付いてなかったのか。私達が村に着く少し前から、毎日この家の様子を窺ってる子供がいるんだよ。雨の日にも一人でヨタヨタ歩いて来るもんだから、お前を世話してた奴らが気にしててな。家に上げようとしても、敷地の手前でお前が無事かどうかだけ尋いて直ぐに帰る……を、繰り返してたんだと。養父が捜しに来るか、こっちが家まで送り届けるかは、その時の状況次第らしいけど」
 「なっ!?」
 アルフィンだ。アルフィンが来ていた。雨の日にも……「一人で」? 五歳にも満たない小さな子供が、たった一人で雨の中を出歩いていたと?
 ありえない。ティルティアがそんな危ない真似を許す筈がない。あの母娘に何があった? それに、と唇を動かしかけて
 「アルフィン、だっけ。金髪で色違いの目。あれは珍しいよな。アルス
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ