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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 47
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るには民の協力が要る。アルスエルナの鎧を纏っている自覚を持った「お前達の」協力がな」
 「!?」
 ふと真顔になった彼がベッドの端に座り、驚きで僅かに引いたハウィスの頭を胸に抱え、後頭部を撫でた。
 「一面的な物の見方に囚われ、衝動に駆られて安易な手法を選んだ点は擁護しない。義賊の犠牲になった者達に関しては、お前達自身が一生抱えていけ。だが、どうにかしようと足掻き続けたお前達の、諦めなかった強さを。諦められなかった弱さを。自分ではない誰かを思い遣る声を。私は受け止め、評価する」

 今まで よく 頑張ったな。
 
 ……何を、莫迦な。
 貴族の特権に、家長も僅かな蓄えも全部毟り取られ、離散してしまった一般家庭がどれほどあったか。
 食料を得られず、小動物よりも小さな体のまま死んでいった子供がどれだけいたか。
 浮浪者の自分でさえ気付けたのに、国を統括する王族が見抜けなかったなんて、ありえない。
 武器を作る名目で調理器具まで徴収していく横暴な軍人達を。見目が良い女子供を連れ去り貪る金持ち達を。助けを求めて流れる血や涙を。その総てを止められる力が有りながら、今日に至るまで見ない振りで放置し続けてきたくせに。
 何が評価するだ。何がよく頑張っただ。
 そんな台詞を吐く資格、貴方には無い!!
 そう、言い返したかった。
 『王族がもっとちゃんと貴族を監督していれば、両親とあの子供は殺されたりしなかった! 他の子供達も、余計な苦しみを知らずにいられた! 私達だって、誰一人殺さずに済んでた筈だ!』と。
 なのに
 「……助けられ……なかった……」
 食い縛った歯の隙間から溢れたのは、権力者への憎しみでも、八つ当たり染みた恨み言でもなかった。
 「どうしてっ……! どうして、助けられなかったの!? どうしてっ!!」
 愚かで無力な自分への憤り。理不尽な世界に放つ慟哭。
 堪え切れなかった涙が次から次へと球になり、彼の衣服を滑り落ちていく。
 「助けたかった! 護りたかったのよ!! マーシャルも誰も、もう苦しまないようにって!! 生きたいと願う皆が、皆で生きていけるようにって!!」
 「ああ」
 「なのに、どうして! どうして私が、あんな……っ」
 あんな、細く頼りない体の少女を、死なせてしまった。
 自分の手で、最悪の状況に追い込んで。
 殺してしまった。
 「……助けたかったの、にっ……!」
 「……ああ」
 頭を抱える腕に力が籠った。頭上で眉を寄せる気配がした。それだけで、彼にも彼なりの怒りや葛藤があったのだと気付く。助けたくても助けられなかったんだと。人の上に立つ王族だからこそ、どうしようもない事があるのだと。
 ……いや、違う。
 本当は、彼に諭されるまでもなく最初から解ってはいたのだ。
 ただ、
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