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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 47
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が今以て理解されてないらしい」
 「……っ其処までしても……! 強権で握り潰されるか、頑として耳に入れてくれなかった前例が、山ほどあるから、でしょう……っ!」
 「だから、相手が無視できない舞台を作り上げてから公表しろと言っている。一般民の大多数が失敗する原因は、毎回この辺にあるんだよ。交渉相手に匹敵する有力な人物・組織を後ろ楯に得る事、時期が来るまでは囮情報を作成・活用して最重要項目の秘匿に勉める事、最も効果的な公開時期を見極める事、立会人の半数以上に受け入れたほうが良いと思わせる状況を作り、受け入れる側にもそれなりの旨みを与え、力量に偏りが無い対話を周りに印象付けて、好いとこ取りしたがる第三者の介入を阻む事。これらは取引の成立に欠かせない、双方に必要な、最低限の自己防衛手段だ。考えてもみろ。王侯貴族や保安職業従事者の言動は、国内外の四方八方から四六時中、公も私も無く気持ち悪いくらい(つぶさ)に観察されてるんだぞ? 「その筋の大物に懇懇と説得されました……」なら高度な話し合いでの決定と見做されても、「一般民がああしてくれ・こうしてくれと言うので運営方法を変えてみましたぁー」じゃ、専門職の面目が丸潰れだろうが。「アルスエルナの王侯貴族は下の人間をちょいと突けば簡単に操れるぞ」と揚げ足を取りたがる連中を牽制する意味でも、不完全な交渉材料をテーブルに乗せない姿勢を貫くのは至極当然だ。お前達、自身の意見を声高に主張した時とか反映された後に出るであろう周囲の影響(へんか)を、それらへの対処方法を、真剣に考えていたか? 誰もがそれぞれ違う生き方で各々の役目と負担を背負っている中、お前達自身の不満が解消されれば世界中の人間が幸せになるとでも? そういうのを「思い上がりも(はなは)だしい」と言うんじゃないのか」
 「…………っ」
 声を上げれば良いというものではない。訴えれば要求が通ると思うのは大間違いだ。力技でごり押しなんぞ言語道断。相手が何者であれ、刃を向ければ倍の数の刃が返ってくるだけ。どんな大義名分を掲げようと、振り上げた拳が辿り着く先には双方の不毛な疲弊、蜜に群がる虫達の略奪合戦しかないと、無数の歴史書が雄弁に物語っている。
 ならば、どうするべきか。
 自分と相手の立場や持ち札を頭に叩き込み、周囲の思惑に気を配りながら自分と相手の最善手と悪手を擦り合わせて妥協点を探り、相手にとって魅力ある花を持たせつつ、自分側に肝要な「応」をさりげなく引き出せ。内政を預かると同時に他国の賢しい治者とも渡り合わなければいけない執政者達に声を届かせたいなら、彼らと同等の腹芸程度は熟してみせろ。
 「私達は万能じゃない。幾万幾億の民が暮らすアルスエルナ王国を護る義務と制約の中で、都度都度最善と思われる将来像を選択していくしかないんだ。そして、可能性をより良く実現す
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