プロローグ
ライブ会場の惨劇
[4/5]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
た服と心臓付近から感じる痛み、そして流れ出る血潮で全てを悟った。
おそらく、奏が使っていた武器か防具の一部が破壊されて、俺に運悪く突き刺さったのだと思う。
逃げずにのうのうと取り残された俺のせいなのに、抱き起こして必死に呼びかける奏の声には非難の色はなく、ただ心配することしか感じられない。
ぼやける視界でなんとか奏の方を見ると、何故か泣きそうな、それでいて嬉しそうな顔を俺に見せた後、目を閉じて微笑み武器を取った。
「いつか――――ぽにして―――。今日は、こんなに沢山の連中が聴いてくれる――――おきのを、くれてやる」
ゆっくりと歩き出した奏の後ろ姿がひどく儚げに見えた。
俺は動かない体を叱咤して、ベシャリと血を吐きながらズリズリと地面を這いずって奏の後ろ姿を追う。
「ふざ――――けんな―――」
フツフツと体の中が燃えるように熱い。
力を失っていたはずなのに、もう動けないはずなのに、俺の体は前に進む。
血反吐を吐きつつ、ついに立ち上がった俺は叫んだ。
「アアアアァアアァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッッッ!!!!!!」
「!? 何してるんだよ! 死にたいのかッ!」
槍を天高く掲げていた奏が、驚きこちら側に振り向く。
俺は気にせず、胸に浮かんだ言葉を口にする。
「―――」
胸の奥でナニカが鼓動しているように感じた。
「何を……まさか、止めろッ!! 【ソレ】を歌うな!」
血相を変えてこちらに走ってくる奏の姿を見ながら、俺は妙に安心するこの歌を聞き惚れていた。
なんでだろうか、昔、遠い遠い遠い昔、誰かと歌っていたような気がする。
胸に思い浮かぶ歌詞の最後の一節を歌い終えるとき、奏の言葉が聞こえた。
「生きるのを諦めるなッ!」
「――――……あぁ」
次の瞬間、俺を中心に光が辺り一面を覆った。
???
【ライブ会場を襲った惨劇!?】
某日、国民的ボーカルユニット『ツヴァイウィング』のライヴ中に起こった過去最大級のノイズ災害は行方不明者・死者一万二千八百六十三人となった。これは観測史上最も多い死者数だが、大きな要因は将棋倒しによる圧死や避難者同士の諍いによるものも多く、ノイズ対策が不十分だったと運営側を批判する声が上がっている。
『ツヴァイウィング』の天羽奏、風鳴翼も重傷を負ったが命に別状はないものの、逃げる最中に大怪我を負った天羽奏は歌手を引退、『ツヴァイウィング』は解散となり多くの人々から惜しまれる声が聞かれた。風鳴翼は歌手を引退せず、歌い続けると公言し、慰問ライブをするなど怪我を物ともしない気丈さは多くの人々から賞賛された。
今後、
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ