0154話『天霧の夜の出会い』
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惚れてしまっているあたしがいた。
「そ、そうなんですか……」
それでつい声が上ずってしまっていた。
提督はそんなあたしの動揺に気づいているのか分からないけど敢えて触れないでいてくれた。助かったと言えば助かったかな……。
だけどそこでふと提督は少し儚い笑みを浮かべているのに気づく。
どこか懐かしそうな表情を感じ取れた。どうしたんだ……?
「あの、どうしたんですか? どこか辛そうだけど……」
「ああ、すまない。こんな時間だからこそつい感傷的になってこの世界に来る前の事を思い出してしまってな」
「この世界に来る前、ですか……」
「ああ。天霧ももう綾波とかに聞いているんだろうと思うけど私はもともとこの世界の人間じゃない。どういう訳かもとの世界からこの異世界に鎮守府のだいたいの艦娘達とともに来てしまって今に至っている」
「知っています」
綾波姉達からは聞いた。
提督はもともとただの一般人だったけど提督のいう通りこの世界に来て成り行きで軍の人間になったという経緯も。
「昼間とかはみんなが起きているからつい目まぐるしい毎日で忘れてしまうんだけどな。
ふとこんな時間にまで起きていると家族や友人たちの事を思い出してしまってな。
……こういう時に飲める人はお酒でも飲んで気を紛らわすものだろうと思っているけど私はあいにくあんまり飲めないからな。だからこういう時は榛名とよく世間話をしているんだ」
提督はそう言って笑う。
それでもどこか寂しさも含んでいるものだとあたしにはわかった。
「そう、だったんですか……」
それであたしはどう提督に声をかけていいか分からなくなってそれ以降少しだけ沈黙が入ってしまう。
そんな、少し苦しい空気なんだけど提督は少ししてまたいつも通りの笑みを浮かべて、
「ま、今はもう天霧や榛名も含めてこの鎮守府にいるみんなが私の家族だ。だから寂しくないんだ」
「そうですか……」
それで空気もだいぶ柔らんだのであたしはそれに感謝しながらも肺に溜まっていた空気を吐き出した。
そんなあたしの様子を察したのか、
「すまんすまん。つい思い話をしてしまったな」
そう言って提督はあたしの頭を撫でてくる。
意外とすんなりその提督の手を受け入れているあたし自身に驚きながらも悪くない、という気分になった。
《もう、提督はすぐに駆逐艦の子の頭を優しく撫でるんですから……天霧さんも嫌だったら嫌って言ってくださいね?》
どこか拗ねている榛名さんの様子をあたしは見て思わず口に出していた。
「もしかして、榛名さん、嫉妬しています……?」
《そッ!? そんなことはないですよ! ただ提督は駆逐艦の皆さんには甘いですから、その、あの……》
どんどんと小さくなっていく声にあたしは榛
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