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第九十七話 傀儡皇女を即位させます。
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ように彼女は頬を湿らせた。
「『頼むわね。』って言われても・・・・私、どうしていいかわからない・・・・。」
「フィオ、こんな時にこんなところで――!」
ティアナが駆け寄ってくるのをミュラーは無言で制した。それが妙に抗しがたく、ティアナは足を止めてしまった。彼は他の提督たちにうなずくと、提督たちはそっとその場を離れていく。後には二人だけが残った。イルーナでさえも例外でなかった。むしろ彼女はミュラーに任せようとしているようだった。少なくともティアナにはそう見えたのだ。
「君は今までと何も変わる必要はないよ。少なくとも、必要以上の重荷を背負う必要はない。何故なら君の中には十分すぎるほどティルレイル上級大将閣下の想いが入っているのだから。」
「でも・・・・。」
「あの人が君にそう言ったのは君に重荷を与えたかったからじゃないと思うよ。そうだとしたらあの人はむしろ悲しく思っただろう。自分のせいで君につらい思いをさせることを。」
「・・・・・・。」
「君は誓ったんだろう?あの方を、ローエングラム元帥を守り抜くと。」
フィオーナはミュラーを愕然と見つめていた。
「どうしてそれを・・・・。」
「イゼルローン回廊を出立する前に、あの人が話をしてくれたんだよ。僕たちの結婚の事を聞いて、一言だけ話をしたいと。」
ミュラーはその時の光景を思い返していた。ジェニファー・フォン・ティルレイルが語ったことはにわかには信じがたい事だったが、これまでの数々の事を思い返したミュラーは最後には納得せざるを得なかった。
『夫婦の間には隠し事はできないでしょう?特にそれが人生を左右するほどの秘密であればなおさらです。だからこそミュラー中将、あなたには彼女を支えていく夫としてこの秘密を知る権利、そして義務があると判断しました。』
驚きが冷めやらぬミュラーに、ジェニファーはそう言ったのである。
『あの子は優しい子です。ですが必要以上に抱え込む性質があります。私はそれを前世からずっと見てきていた。だからこそあなたにお願いするのです。もしこの先あの子が悩み、そして苦しんでいたならば、解決しなくてもいい、一緒にそれを分かち合ってください。私自身このようなことを言う資格も権利もありはしないとあなたは思うかもしれないけれど、一言言っておきたかったのです。どうか・・・・。』
ジェニファーは一礼した。
『あの子の事、よろしくお願いします。』
だからこそ、とミュラーは思う。この人の事をずっとそばで支えていくのだと。
この日――。
ペグニッツ子爵の娘である幼女カザリン・ケートヘンがフリードリヒ4世の後を継いで、女帝として即位した。
「傀儡皇女即位について、あなたも色々と思うところはあるかもしれない。そしてそれは私たちも同じ。でも、これは避けては通れない選択肢よ。何故
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