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俺の四畳半が最近安らげない件
青の四畳半
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「父の仇!!」
大音声で叫びながら、俺はようやく探し出した仇の住まう四畳半に飛び込んだ。
「……う」
勢いにまかせて飛び込んだはいいが、異臭にむせる。
所狭しと並べられた液晶のディスプレイから放たれるブルーライトが夜半の四畳半をつぶさに照らし出す。
青い光が溢れつつ薄暗い、奇妙な四畳半に座す人影が、ひとつ。
空き缶やカップラーメンの堆積する四畳半の中央に座すのは、伸ばしっ放しの髭と蓬髪に埋もれる中年の男だった。半分閉じられ、濁った光を宿す目は、すっかりブルーライトに灼かれていた。
「……俺が、仇とな?…お前の父親は何処かのSEか?」
「政府のシステムメンテナンスを請け負っていたSEだった!…貴様がアタックを掛けた日に保守担当だった父は…!!」
責任を取らされて父は!!そこまで叫んだあたりで息が詰まった。…とにかく臭い。
「……そうか、あの日の保守担はお前さんの……」
気の毒な事をしてしまった…と、蓬髪の男は合掌した。…おい、何に拝んでんだ。貴様のせいで俺の父は…!はらわたが煮えくりかえるとはこのことだ。俺はゴミを踏みしめながら男に近づいた。
「気の毒と思うなら、貴様も父と同じ道を辿れっ!!」


「そうすることにしよう」


男があまりに静かに、穏やかに答えるので俺は面食らって後じさってしまった。
「ただし、この『仕事』を終えてからだ」
そう云って男はディスプレイの一つを顎で示した。何やら長いソースが表示されている。
「…何だこのプログラムは」
「某国政府の、システムだ」
「へ?国のシステムとか請け負ってんの!?」
「いや、アタックをかけている」
「犯罪じゃねぇか」
「いや違う、ちょっと聞け。これはミサイル発射に関わるシステムで」
「いよいよ犯罪じゃねぇか、神妙にしろ仏罰を加えてくれる」
ぼさぼさの髪を掻き分け首を探し当てて締め上げると、奴は絞め殺される鶏みたいな声で叫んだ。
「ちっ違っ…聞け―――!!」
「キケリキ―――!!」
「ふざけてんじゃねぇ!首絞める前に聞けよ!!」
「辞世の句は5,7,5でシンプルにな。7,7は無しだ」
「何でそんなとこケチるんだ。7,7くらい詠ませろよ!…というか辞世の句を聞かせたいわけじゃねぇ。国語は苦手だ」
「理系アピールか」
「混ぜっ返すな!!…いいか、某国ミサイルの照準は」


この、日本だ。男はそう云って俺の目を見返した。


「はは、まさか……」
俺はもう一度混ぜっ返そうとしたが、その眼差しの威圧につい屈してしまった。
「……某国ってのは」
「あの国だ。云わずとも知れるだろう」
ミサイルと聞いて『あの国』しか思いつかなかった俺の発想の、何と陳腐なことだろう。だがこの場合、それでよかったらしい。俺が声は出さずに唇だけ動かして俺が想
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