青の四畳半
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しか睡眠をとらない。食い物もロクに摂らないのでさすがに心配になり、買い出しに行こうとすると「時間を無駄にするな」と止められた。結局、出前やネット販売で済ませている。
「もう少しだ、脆弱そうな部分は特定できているんだ、もう少し……」
今日も何かを呟きながらディスプレイを睨み、何やら打ち込んでいる。…やがて、手がぴたりと止まった。
「……見つけたぞ、セキュリティホールだ……!!」
髭に囲まれた口元が、にぃ…と吊り上がる。
「おいお前!ぼうっとすんな、一気にアタックを仕掛けるぞ!!」
ここ一カ月小声でぼそぼそ呟くだけの奴だったとは思えない大音声で俺を怒鳴りつけると、奴は狂ったようにキーボードを叩き、そこら辺に投げ散らかされたスマートメディアから正確に必要なものを抜き出し、慣れた手つきでUSBに差し込んだ。俺のPCにも同様に何かを差され、俺の目では追えない程のスピードで何かを設定して「中のソースを全部試せ!」と口早に云い捨てて再び俺に背を向けてしまった。
ここからはもう、一瞬の出来事だった。
世界中に散らばる『あの組織』の構成員には、何か符丁のようなものがあったのだろうか。この男がアタックを始めたその瞬間に、怒涛のような一斉攻撃が始まった。それはまるで小動物の大群に襲われもがく恐竜のように大きくのたうち、抗い、驚異的な速さで防御壁を張り、だがそれらは虚しく突破され。
―――やがて、あれだけ騒がしかった青いスクリーンは徐々に沈黙していった。
「……おい」
「……終わったよ。もうミサイルは発射出来ない」
男の指が、だらりと弛緩して落ちた。
「もう思い残しはない。…俺が殺してしまった父親の仇を討て」
目を閉じた男の口から青の洞門のラストと同じ台詞が零れた。俺も同じラストを辿るべきだったのかもしれない。しかし。
「親父、死んでないが?」
はぁ!?みたいな顔をして男が折角閉じてた目を見開いた。
「え、死んでないわけ!?…じゃ社会的地位を奪われて再起不能になったとか…?」
「この間定年退職したから、再起不能っちゃ不能なんだけど」
「定年まで勤め上げたの!?」
「いや、まぁそうなんだけど、大変だったんだぞ!?あの件で責任取らされてシステムの復旧作業で会社を離れられない日々が続いて、その後遺症で今も重いリウマチを抱えてんだ!!……今にして思えば『父の仇』は大げさだったかもしれんけど…居場所が分かれば文句の一つも云いに行きたくなるだろ!?まぁ…労災はおりたんだけどな!!」
「そんなライト感覚な敵討ちだったの!?」
「このせいで1カ月も拘束されることになると知ってたら来なかったわ!!俺再就職しなきゃいけないのに!!」
「ノープランかよ若者怖ぇ!!てか具体的に俺をどうする気だったの!?」
「ち
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