青の四畳半
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像した国を述べると、男は大きく頷いた。
「そんな情報、どこから」
「俺が所属する世界的ハッカーネットワークだ」
「つくづく懲りてないな貴様」
「お前からしたら、そう見えるかもしれないな…」
穏やかに、しかし指だけは忙しくキーボード上に走らせながら、男は訥々と語った。
「お前の父親を始め、クラッカーだった頃の俺が為した数多のサイバーテロは、様々な人間の人生を狂わせた。お前同様、俺を付け狙う奴は多い。当然だ……」
この後、自分がいかにして自分の罪に気が付いたか、どれほど煩悶したかなどを聞かされるが、どうにも話が散文的過ぎて何を云っているのかよく分からない。国語が苦手というのは嘘じゃないようだ。
「…とにかく要点を簡単にまとめると、自分のサイバーテロで苦しむ人々を目の当たりにして俺反省、というわけだな」
「そんな馬鹿みたいなまとめ方すんなよ!!」
「で、貴様は今までの罪滅ぼしにそのミサイル発射を止めようと」
「だから簡単にまとめるなよ!罪滅ぼし…というのがないではないが、俺には俺の矜持みたいなもんがあるんだよ!!」
そう云って男は、一瞬手を止めた。
「偉大なるア○ニマスの一員として!!」
「すげぇビックネーム出て来たな!!」
全世界にネットワークが散らばっていて実体が把握出来ないクラッカー集団…くらいの知識しかないが…。あと、あれだ。アノニ○スと云えばやっぱアレだよな。
「…ガイ・フォークスのお面持ってんの…?」
「ねぇよ!何ワクワクしてんだお前は!!アノ○マスの構成員が全員アレ持ってると思うなよ!?」
「………っち」
「うっわ舌打ちだよ腹立つわ…まぁいい。俺は日本を救うためにミサイル発射プログラムに侵入して停止させる。それが、俺の最期の仕事だ。…それでいいか」
「―――最期の仕事」
「これだけは、やり遂げさせてくれ。その後、父親の仇を討つがいい」
―――なんてこった。青の洞門みたいな展開になってきやがった。
「…ちなみにお前、プログラミングは?」
こいつも同じことを考えていたらしい。
「多少は。仕事は退職したばかりだ」
「じゃ、ひたすら系のところを頼む」
「ええ〜…」
「一刻も早く父親の仇を討ちたいんだろ」
…仕方なく、促されるままにディスプレイの前に座った。
そんな事があって、一カ月程経っただろうか。
この男の傍らで作業を手伝っていて、分かった事がある。
善悪を脇に置けば、奴はやはり凄い男だということだ。
俺もごく平凡なプログラマーとして勤めた経験がある。だからこそ、その力量の差、熱量の差を思い知らされる毎日だ。
その集中力も驚異的だ。ここ一カ月間、俺はこの男が食う、寝る、ハッキング以外の行動に興じているのを見たことがない。寝る、などと云ったが、奴は一日に3時間程度
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