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ソードアート・オンライン -旋律の奏者- コラボとか短編とかそんな感じのノリで
憂いの雨と陽への祈り
地に伏す桜色
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げんなりとした調子で片手を振ったユーリの耳に届いたのは、既にお決まりとなりつつある軽口ではなかった。
「本当に、嬉しかったのです」
その声が帯びる真剣な色調に、ユーリは思わず振り返ると、そこにあったのは穏やかな笑みでも、酷薄な微笑でもない、どこか寂しげで切なげな、消え入るような笑顔だった。
??フォラスはあまり、私を守ろうとはしてくれないので。
それは聞かせるつもりのない呟きだったのだろう。 独り言の調子で紡がれた言葉は、しかし、しっかりとユーリの耳に届く。
人狼スキルによってブーストされている五感は、本人の望むと望まざるとに関わらず所有者に微細な音を届けてしまう。 戦闘面や情報収集面では役に立つことも多いが、このような状況では気まずい思いをするだけでしかない。
「ん? ああ、申し訳ありません。 聞こえてしまうのでしたね」
「わりい……」
「いえ、ユーリさんの所為ではありません。 自身の不注意を恥じ入るところでしょう。 聞かなかったことにして頂けると非常にありがたいのですけれど」
「あいよ」
短く答えて頭を掻くユーリ。
確かにアマリの言うように聞いてしまったことはユーリの責任ではないが、とは言え聞こえたことをアマリに悟られたのは表情に出してしまったユーリだった。 少なくとも彼自身はそう思っている。
この辺りが彼の性根の誠実さを如実に表していると言えよう。 普段はぶっきらぼうな口調だが、やはりユーリは善良だった。 善良にすぎると言っても過言ではないのかもしれない。
両者の間に漂う、僅かに重い空気を解消したのはアマリだ。
「ところでユーリさんは攻略組には復帰なさらないのですか?」
「あー、それな……できれば戻りたくないってのが本音だ」
「目立ちたくはない、と?」
「まあな。 ただでさえ目立ってたのに今はこれだろ?」
「可愛いと思いますよ。 私は好きです」
「男に対して可愛いって褒め言葉じゃないからな」
「ふふ、何食わぬ顔で私の告白を流しましたね」
「冗談で言ってるって丸わかりなのに真剣に答えるわけねえだろうが。 ほら、馬鹿やってないで行こう、ぜ?」
不満そうな声を適当に流して先を促そうとして、ユーリはそれに失敗した。
「アマリ?」
ぐらりと、アマリの身体が不自然に傾いだのだ。
壁に手を突いて辛うじて倒れることを回避したアマリは不思議そうに首を捻り、やがて得心がいったように頷いた。
「限界、ですか……もう少しいけると思っていたのですけれど、本当に我ながら情けない」
「は? おい、どう言うことだ」
「安心してください。 バステの類ではありません。 このまま、捨て置いて頂いて構いません、ので……」
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