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憂いの雨と陽への祈り
固定式アマリちゃん砲
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に互いの戦い方を熟知していないのだ。 個々それぞれが同じ戦場に立ち、近距離で連携をするのは些か以上の危険を伴うだろう。 少なくともアマリの爆裂は広範囲無差別攻撃が信条だし、ユーリの抜刀術もユーリ曰く範囲攻撃が可能らしい。 互いに心配する要素はなかった。

 「じゃあ行くぞ!」
 「はい」

 端的な合図と同時に隠蔽を解除してからボス部屋へと侵入する。 まず入ったのはユーリ。 彼ができ得る限り敵を引き付け、その隙にアマリが壁の卵を処理する算段だ。 言葉にはしなくともこの程度の疎通は可能だったらしい。

 「こっち向やがれ!」

 女王を含む全ての個体がユーリの登場に視線を向けた直後、人狼スキルの一端を発動させる。
 《ウルフハウル》
 地の底より響くかのような重々しい咆哮は敵のヘイトをユーリにのみ集中させ、それによって敵意は完全に固定された。 これで余程のことがない限り他のプレイヤーにヘイトが向くことはないだろう。

 それを確認すると同時にアマリもボス部屋へと足を踏み入れる。 足を踏み入れ、酷薄に微笑した。

 「さあ、ここからが私の仕事ですね」

 メニューの展開。 操作。 いくつかのタップに呼応し、大量の武器がアマリの周囲へと顕現する。
 両手剣。 両手槍。 両手槌。 両手棍。 両手斧。 主武装であるディオ・モルティーギを除く、アマリの持つ全ての武器がそこかしこに転がった。

 「では、逝ってしまいましょうか」

 短く笑み、そして最も手近にあった両手剣を拾い上げ、全力で投擲した。

 爆裂は直接攻撃にのみ発生するスキルではない。 それはシステムが攻撃と認識すればそれだけで爆裂は発動し、周囲を衝撃波が喰らい尽くす。
 そう。 それが投擲スキルを持たないで投げた投擲物でさえも起点にして、だ。

 アマリの絶対的な筋力値による投擲は精密な狙いこそつけられないものの、そもそも狙いは壁一面にびっしりと付着した卵だ。 精密な狙いなど必要なく、蟻たちの頭上を越えて壁に着弾する。 同時に巻き起こった爆裂の衝撃波は周囲を呑み込み、半径5m規模でゴッソリと卵を喰い破った。
 これで卵自体が背景としてのオブジェクトではないことが証明されたと言っていい。

 そこからの行動は早かったし躊躇いも介在しなかった。 周囲に散乱させた武器群を手に取り、投擲する。
 それは最早、大砲に等しい。 壁に着弾し、全てを薙ぎ払う。
 そこまでの行動を起こしてなお、アマリにヘイトが向くことはない。

 爆裂を起点となった武器の悉くが地に落ちる。 さすがにそこからは爆裂は発動しないが、しかし、彼女の目的はそこにはなかった。 彼女の目的は卵の一掃であり、それだけだった。

 「やはり……残りますか」

 投擲スキルを持たない
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