暁 〜小説投稿サイト〜
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憂いの雨と陽への祈り
桜色の彼女
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んのことかわからず、けれど確実な嫌な予感を感じて大きく後ろに飛び退いた直後、ふらりと立ち上がったアマリが握った右拳を壁に突き立てた。

 《爆裂》
 ユーリやシィはもちろん知らないが、攻撃による衝撃を拡張するそのスキルによって、通路の全てを爆裂が喰らい尽くす。 だが、不可視の壁は小揺るぎもしなかった。

 「なんだってあんな取り乱してるんだ?」

 口をついた疑問に答える声はない。
 なんだかんだと言いながら今の今まで至極冷静で、あそこまで我を忘れての破壊活動はなかった。 テンションがおかしかったり危ない発言をしたりはあったものの、その行動は一貫して一線を超えたりはしなかったと言うのに、だ。

 フォラスに会えたと言うのがそこまで重要なことなのだろうか? あるいは目の前にいるのに触れられないと言うのがそこまで辛いことなのか?
 いや、実際に辛いことなのだろう。
 ユーリが冷静でいられるのはアマリがあそこまで冷静さを欠いているからであって、これが1人であったのならもしかしたらユーリも取り乱したかもしれない。

 ??いや、さすがにあそこまで取り乱したりはしないけどな

 内心で付け足して苦笑う。
 アマリはなんとなく人間味の欠けているような印象があったが、今は明確に人間だ。 行動は常軌を逸している感はあるけれど、それでも親近感の湧く行動だった。

 苦笑を微笑に切り替えたユーリの眼前で一際大きな噴煙が通路から吹き抜けてきた。 そこで今まで連続していた拳撃がようやく止まったらしい。 それから少しして噴煙が晴れ、その先がようやく見通せるようになる。
 シィは驚きながら面白がっているようで、フォラスは楽しげに微笑していた。 隣り合いながらも一定の距離を保っているのは2人の微妙な関係性を示しているようで面白い。
 そんな風に少し遠くから眺めているような感想を抱けるのはユーリの余裕を表しているのだろう。

 「さて……」

 そう言って壁に預けていた背を離し、アマリのいる通路に入った。

 「もう気が済んだか?」

 不可視の壁に拳を突き立てたまま固まるアマリの背に声を投げる。 と、ゆらりと直立した。

 「……ユーリちゃん」

 無機質な、感情の抑揚が完全に廃された声音。

 「先に進むですよ」
 「お、おう……」

 緩さが消失しているが怜悧な口調にまではなっていない。 アマリと素の中間といったところか。 しかし、その中途半端さが逆に不気味だった。 少なくともユーリが、あの普段は頑なに冷静ぶっているユーリが僅かに気圧される程度には不気味だったのだろう。

 くるりとその場で反転したアマリがユーリの横をすり抜けていく。
 とりあえず先に進むとジェスチャーでシィに伝えると苦笑いと共に手を振
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