暁 〜小説投稿サイト〜
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憂いの雨と陽への祈り
屹立する旗
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れてきました。 慣れないことはするべきではないと言うことですか。 いえ、久しぶりのことを、と言うのが正解ですね)

 自嘲のように唇を吊り上げてみるものの、いまいち様になっていないのは自覚している。 眼前で警戒しながら階段を降りている獣耳の少年はそんなアマリの様子に気がつくこともなく、周辺警戒を怠ってはいない。

 ユーリ。
 彼はアマリから見てもかなり不思議な少年だった。
 怒声をあげ、言葉でも表情でも怒りを露わにしながら、アマリの無礼に心底怒っている風には見えない。 それどころか手慣れたようにあしらっている様子さえある。
 アマリの周囲にいる少年たちの殆どはアマリの言動に怒るか、呆れるか、引くか、恐るか、そのどれかをしている。 唯一の例外はフォラスで、彼だけはアマリの言動を愛おしそうに笑い、受け入れるのだ。
 だからこそ2人の関係が続いているのだが、ユーリの反応はフォラスに近いと言っていい。
 怒り、呆れ、引き、恐れているのは確かだろうが、そのどれもが全て中途半端なのだ。 アマリの奇行に対する反応としては薄いと言える。 フォラスほど完全に受け入れてはいないものの、拒絶的な反応は現時点ではひとつも見られない。 その理由はまるで判然としないが、しかしそれが心地よく思えるのも確かで、言ってしまえばアマリのテンションがおかしいのはなにも打算が全てというわけでもなかった。

 (彼はもしかしたら……)

 自分の中から湧き出た思考は首を振って打ち消す。 その動作に伴って発生した髪の擦れる音を聞き取ったのだろう。 ユーリが肩越しに振り返った。

 「どうした?」
 「な、なんでもないです!」
 「? そうか」

 また前に向き直ったことにアマリは安堵した。

 ユーリの顔の造形は非常に整っていると言える。 よく見なくても間違いなく可愛い、それも美少女と見紛うレベルで可愛い顔立ちだ。 その辺りもフォラスに似ていると言っていい。 造形自体の類似性ではなく、性別を間違えたかのような愛らしさが、だ。
 それはつまりアマリにとって、より正確に言うのならアマリのプレイヤーである少女にとって、非常に食指の唆る顔立ちで、端的に言ってしまえばタイプなのだ。 外見は全てに於いて好みと言っていい。
 加えて獣耳と尾も非常に可愛らしいと思っている。 可愛い物好きの彼女は、だからユーリを素直に可愛いと思うのだ。

 (それでいて性格もいいとは……)

 再度、頭に浮かんだ思考を今度は無動作で弾き出す。

 そう。 そんなはずはないのだ。

 (ですが……)

 しかし

 (それもまた、ありなのかもしれませんね)

 掠めた思考は肥大していき、ついに形になってしまう。

 私はユーリさんを好きになってしまいそうです
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