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ソードアート・オンライン -旋律の奏者- コラボとか短編とかそんな感じのノリで
憂いの雨と陽への祈り
山嵐のジレンマ
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善意でもないと、ユーリは否定する。
 それは醜い我意でありエゴだ。 誰かを守って死ねるなら本望などと言うのは死の理由を他者に求めた自殺衝動だ。

 だからこそ、ユーリは叫ぶ。

 「ふ、ざけんな!」

 そしてユーリは駆け出した。
 耐毒スキルは毒を防ぐためだけのスキルではない。 身を侵す毒を通常より早く解除することもできる。 0.01%を射抜いた麻痺毒は極めて高度な耐毒スキルにより解除され、その瞬間にユーリは走り出していた。

 アマリの横を通り過ぎ、飛来する針を右手に握る刀で全て斬り落として走る。 後ろから聞こえるドサリと言う音はアマリが倒れた音だろう。 それでも振り返ることなく走る。
 斬り、砕き、走る。 走る、走る、走る。

 やがて視界に映ったのは、背に大量の針を生やしたヤマアラシのようなモンスターだった。

 「てめえか!」

 叫び、一足で刀の間合いへとそれを収める。 耳と尾を隠すために纏っていたローブは払いきれなかった針によって耐久値を削られ、青い粒子となって消えた。 忌避する耳と尾が外気に触れたことさえ意識せず、銀色の髪は燦然と煌めく。
 いつの間にやら鞘へと納めていた刀の柄に手を添え、滑り込むように深く身を沈めた。 モンスターもユーリを排除しようとその双眸をグルリと動かすが既に遅い。

 深い蒼のライトエフェクトを帯びた刀が振り抜かれる。 空振りでもしたのか、刀はなんの衝撃もダメージもモンスターには与えていない。

 しかし

 刹那の後に幾重もの斬撃が連なる。 軌跡は蒼の燐光を散らし、敵の身を、針を、耳を、頭を、口を、足を、その全てを余さず飲み込み、斬り刻む。

 ()()()10連撃ソードスキル、《真蒼》

 ユーリの切り札にして奥の手は、ヤマアラシのHPを喰らい尽くし、爆散させた。

 「????っ」

 成果を確かめるでもなく、硬直が解けるや否や反転。 来た道を必死の形相で駆け戻ったユーリは地に倒れ伏すアマリと、その背中にツルハシ状の武器を突き立てているモンスターを視認した。

 「あはー、ユーリちゃんぐっじょぶですー」

 麻痺の解けていないアマリから気の抜けた労いが飛ぶが無視して、ユーリは狭い通路内を跳んだ。 動けないアマリを執拗に攻撃しているゴーレム型モンスターの顔面にユーリの飛び蹴りが炸裂するが、ソードスキルでもない、まして筋力値がそこまで高くないユーリの一撃では満足なダメージは与えられない。
 それでもアマリに向いていたヘイトがユーリに向けられ、その手に持つツルハシが緩慢な動作で振り上げられる。 しかし、それは彼の前では致命的に遅かった。

 ユーリの身が空中で翻る。 刀が纏う光は髪と同色の涼やかな銀。
 回転の勢いを乗せた
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