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幻影の旋律
燐ちゃんの憂鬱(オリジナル)
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まだ震える身体をどうにか鎮めつつ、リンは2人の友人に視線を向ける。
 ………そう、怯えた子羊のように《どうにか》震えを鎮めなければ、リアリティというものは失ってしまうのだ。


「………こんな下らない頼まれ事はもう御免だからな」


 旦那を探すべく先行する桜色の少女に、筋違いながら同情の意を込めて溜息を漏らす。
 だが、これくらいは痛み分けとしてもらわねば、こちらも釣り合わないというのが本音だ。それでも、少なからず《陥れてしまった》罪悪感はあるのだが、この際は水に流してもらうとしよう。
 ………いや、何の贖罪もなしに赦されていい筈などない。やはり、俺は極めて利己的な性格であるらしい。


「こういう小手先の駆け引きはリンの領分だろう?アマリちゃんも疑ってなかったし、それに殺されかけたんだから御相子じゃないか」
「おアイコ、ね。俺には詐欺にしか思えないが………ああ、やっぱり今からでも謝ろう………自首してくる………」
「よ、弱気になるんじゃないよ!?アンタはこれっぽっちも悪くないんだから、な!?」


 必死の形相で俺のメンタルを持ちなおそうとするリゼルを後目に、それでも俺は脳内で一部始終を振り返る。如何に落ちぶれた目的の為とはいえ、事実として先の《心理戦》は死の危険を孕んでいたというのは言うまでもない。

 《惨殺天使》が持つ斧、その持ち方を見たときに《彼女は自分の武器を信頼している》と認識した。故に《本気の殺意》のない、牽制のような攻撃には《武器を振るう為の腕》を用いようとしないと確信したのだ。
 レイとリゼルが《惨殺天使》と会話を始めたとき、俺は隠蔽スキルもなしに居ないものとされていたのは容易く認識できた。だからこそ、好機を悟った。
 彼女の異常性を確かめるべく接触を試みると、運が俺に味方して、見事に突き飛ばしてくれた。俺が見上げ、《惨殺天使》が見下す。シチュエーションはその時に整った。
 俺を弱者と認識した《惨殺天使》は、恐らく俺を転倒させた時点で優位を確信しただろう。その心理を正当化する為に、俺は無様に震えてみせた。
 そして思惑通り、俺を拘束するように《右脚》を突き出したその瞬間、俺の――正確には、リゼルの――目標は達成せしめられた。

 期を見極め、演じ、騙し、思い込ませる。一手でも狂えば成立しなかった。
 《勝利》と呼ぶには余りにも矮小で歪つな、だが、命懸けの戦いは確かに幕を閉じたのだ。


「で、どうだったんだい?」


 悪戯っぽい表情で俺の報告を心待ちにするリゼルには思いやられるが、それでも、俺は達成した任務の報告を粛々とこなすだけ。


「………レースの白。ついでにガーターベルト付き。内腿にほくろがある」
「おお、流石はリンだ!アマリのスカートの内側は鉄壁だったから
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